Disorganization

池田信夫氏が19日エントリで今回の米国の金融危機をDisorganizationという観点から捕らえている。

こういう状況で流通システムが崩壊すると何が起こるかを理論的に分析したのが、Blanchard-Kremerの有名な論文 "Disorganization"である。これは社会主義崩壊後のロシアやウクライナGDPが60%以上も下がった原因を解明したものだ。
契約がいつホールドアップされるかわからない状況では、疑心暗鬼が広がってだれも資金を出さなくなる。
(中略)
だから今回の問題をサブプライム危機と呼ぶのは過小評価であり、debt disorganizationと呼んだ方がよい。
(中略)
必要なのは取引の信頼性を回復し、契約を一つ一つ清算して損失を確定する「ミクロ的」な仕事である。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/6e655a46738da0be4e15d6b717809563

デット・ディスオーガニゼーション理論を日本の金融危機に当てはめて分析した、といえば小林慶一郎氏が思い出されるが、池田氏は以前、小林氏と加藤創太氏共著の「日本経済の罠」についてこんな評価を下している。

この本の中核となる「組織破壊」の議論が依拠しているのは、Blanchard-Kremerの移行経済に関する有名な論文である。これは経済がマフィア化して流通が寸断され、大規模な「ホールドアップ問題」によって資金調達や部品供給が不可能になったロシアやウクライナの状況を分析したもので、現在の日本に当てはめるのは荒唐無稽である。日本でホールドアップ問題が頻発しているという証拠はない(著者は例も挙げることができなかった)。日本経済の問題は、むしろ全員が長期的関係にトラップされて切るべき取引が切れないことにあり、移行経済のモデルとして当てはまるのは、中国の国有企業に見られるsoft budget constraintである。要するに、本書は日本経済の問題をまったく逆さまに見ているのである。

このように問題のとらえ方が根本的に間違っているので、大げさな理論が出てくる割には、結論は「不良債権を早く処理する」という当たり前の話だ。しかし、これは本書のモデルとは矛盾している。もしも日本でdisorganizationによって与信の不足が起きているなら、必要な政策は不良債権処理ではなく、大規模な資本注入による銀行の全面救済である。

http://www003.upp.so-net.ne.jp/ikeda/Kobayashi.html


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