資産価格の理論:私的概論/(1)平均−分散法

以前*1友人との勉強会で自分なりに資産価格の理論を概説したことがあったので、今日からはその資料をアップしていく。

<中心的な流れ(1)>

○平均−分散法(Mean-Variance Method)

 ハリー・マーコビッツ[Harry Markowitz “Portfolio Selection”(1952,1959)]


 資産価格のリスクとリターンの関係を始めて定量的に分析
 リスク=リターンの標準偏差(ないし分散)と定義
   →期待リターン E(r) と リスク STD(r) or VAR(r) のtradeoffを定式化


 ある期待リターンRのもとでリスクが最小となるポートフォリオw=(w1 , w2 , ・・・ , wn)’は、以下の最適化問題を解いて求められる。

  minΣVAR(Σwiri)=ΣΣwiwjσij   s.t. ΣwiE(ri)=R,Σwi=1
      or
  min VAR(w’r)=w’Cw   s.t. w’E(r)=R, w’u=1  (行列形式で表現*2


   σij=銘柄iとjのリターンの共分散、 E(ri)=銘柄iの期待リターン、
   C=分散共分散行列、 u =(1,1,・・・,1)’

 そうして求めたポートフォリオを効率的ポートフォリオ(efficient portfolio)という。
 効率的ポートフォリオをリスク−リターン平面上で描画すると、双曲線になる(リスクが分散ならば放物線)。
 これを効率的フロンティア(efficient frontier)と呼ぶ。

 この効率的フロンティアと、各人の効用を表わすリスク・リターンの無差別曲線(下図点線)との接点が、各人にとっての最適ポートフォリオ(optimal portfolio)となる。
 例:効用関数がU=R-λσ2の場合、効用U0の無差別曲線はR = U0 + λσ2 *3

  • 前提:
    • 投資家はリスク回避型で期待効用を最大化
    • 投資家はリターンの平均、分散をベースにポートフォリオを選択
    • 投資家はすべて単一期間の投資を行なう

【用語】 「ユニバース」と「ポートフォリオ

 「ユニバース」
 母集団(例:東証一部)
 「ポートフォリオ
 ユニバースから選択された銘柄の組み合わせ (例:日立50%、東芝30%、三菱電機20%)

*1:1999年末頃。昨日までアップした「経済学:私的概論」より1年強前。

*2:イタリック体はベクトル、ボールド体は行列を表すものとする。

*3:λ=リスク拒否度(risk aversion)。各人によって異なる。