大都市は経済成長にとって重要なのか?

というNBER論文が上がっているungated版)。原題は「Are Big Cities Important for Economic Growth?」で、著者はMatthew Turner(ブラウン大)、David N. Weil(同)。
以下はその要旨。

Cities are often described as engines of economic growth. We assess this statement quantitatively. We focus on two mechanisms: a static agglomeration effect that makes production in bigger cities more efficient, and a dynamic effect whereby urban scale impacts the productivity of invention, which in turn determines the speed of technological progress for the country as a whole. Using estimates of these effects from the literature and MSA-level patent and population data since 1900, we ask how much lower US output would be in 2010 if city size had been limited to one million or one hundred thousand starting in 1900. These effects are small. If city sizes had been limited to one million people since 1900, output in 2010 would have been only 8% lower than its observed value.
(拙訳)
都市は良く経済成長のエンジンと評される。我々はこの主張を定量的に評価した。我々は2つのメカニズムに焦点を当てた。都市がより大きければ生産がより効率的になるという静的な集積効果と、都市の規模が発明の生産性に影響し、それがさらに国全体の技術進歩の速度を決定するという動的効果である。従来の研究におけるこれらの効果の推計値、および、1900年以降のMSA(大都市統計地域*1)レベルの特許と人口のデータを用いて我々は、都市の規模が1900年以降百万もしくは十万に制限されていた場合に2010年の米国の生産がどれほど低くなっていたであろうか、という問いを追究した。その効果は小さかった。1900年以降に都市の規模が百万人に制限されていた場合、2010年の生産は観測された値に比べて8%低くなっていたに過ぎない。

結論部では、自分たちの推計ないし結論が間違っている可能性を4つ挙げている。

  1. 生産性における都市の規模の効果、ないし研究における同様の規模の効果のパラメータ化を誤った。
    • しかし各研究で推計されたパラメータの範囲の高い端を用いても、結論がひっくり返ることは無かった。
  2. 静学にせよ動学にせよ、自分たちが拾い損ねた都市の規模の効果があった。
    • その点は直前の節で論じた。
  3. 都市の規模が制限された場合、都市の数が多くなり、その中には実際に観測されたのとは違う基本的な生産性を持つものも出てくるだろう。それは、新たな都市が実際の都市ほど望ましい場所に立地していないためであろう。
    • もしそうならば、経済成長のエンジンは都市そのものというよりも良い立地ということになる。
  4. 解釈の違い。都市の規模の効果が米国の経済成長の1割を説明するのであれば、成長のエンジンと言って良いのでは、という人もいるかもしれない。