というNBER論文が上がっている(9月時点のWP、昨年1月のプレゼン資料)。原題は「Innovation Booms, Easy Financing, and Human Capital Accumulation」で、著者はJohan Hombert(パリ経営大学院)、 Adrien Matray(プリンストン大)。
以下はその要旨。
Innovation booms are often fueled by easy financing that allows new technology firms to pay high wages that attracts skilled labor. Using the late 1990s Information and Communication Technology (ICT) boom as a laboratory, we show that skilled labor joining this new sector experienced sizeable long-term earnings losses. We show these earnings patterns are explained by faster skill obsolescence rather than either worker selection or the overall bust in the ICT sector. During the boom, financing flowed more to firms whose workers would experience the largest productivity declines, amplifying the negative effect of labor reallocation on aggregate human capital accumulation.
(拙訳)
イノベーションのブームは、新興のハイテク企業が技能を持つ労働者を惹きつけられるだけの高賃金を支払うことを可能にする資金調達の容易さによって刺激されることが多い。1990年代末の情報通信技術(ICT)ブームを実験台に、この新部門に参入した技能を持つ労働者が、長期的に相当の収入の損失を経験したことを我々は示す。こうした収入のパターンは、労働者の選択やICT部門全体の不況というよりも、技能が早く陳腐化することで説明されることを我々は示す。ブームの間、労働者の生産性の低下が最も大きい企業により多くの資金が流れ、マクロの人的資本蓄積に労働の再配分が与える負の影響を増幅した。
本文およびスライド資料によると、労働者の選択の問題(=ブーム時に質の低い労働者を雇い入れた)ではない、ということは、ブーム前に雇用した労働者のコホートでも同様の賃金低下が見られたことで示された、との由。ICT部門全体の需給ショックの問題ではない、ということは、ブーム後に雇用した労働者のコホートでは同様の賃金低下が見られなかったことで示された、との由(ブーム後に雇用した労働者はICT技術が安定化した後の雇用だったため、技能がそれほど陳腐化しなかったとのこと)。