サマーズ「ロボットは中産階級の労働者を傷付け、教育は問題解決にならない」

少し前に、機械によって雇用は喪失していないという趣旨の発言をサマーズがハミルトン・プロジェクトのセミナーでした、というマイク・コンツァルのブログエントリを紹介した。WaPoのWonkblogのJim Tankersleyが、その件についてのサマーズの真意を確かめるために電話で45分のインタビューを行い、内容を「Robots are hurting middle class workers, and education won’t solve the problem, Larry Summers says」という記事にまとめている。またその記事は、サマーズのサイトにも転載されている(H/T Economist's View)。


同記事でサマーズは、技術は唯一の要因でも支配的な要因でもないかもしれないが、雇用に影響を与えている、という見方を示している。そして、技術は上位1%の所得シェアの上昇と密接に関連している、として以下の事例を提示している。

The rise of the top 1 percent is likely very tied up with technology. When George Eastman had a fantastic idea for photography, he got quite rich, and the city of Rochester became a flourishing city for generations, supporting thousands of middle-class workers. When Steve Jobs had had remarkable ideas, he and his colleagues made a very large fortune, but there was much less left over – there was no flourishing middle class that followed in their wake. So, understanding what’s happened to the top 1 percent is important in understanding the overall picture.
(拙訳)
上位1%の所得シェアの上昇は、技術と密接に結びついている。ジョージ・イーストマンが写真について素晴らしいアイディアを思い付いた時、彼は非常に金持ちになり、ロチェスター市も何代にも亘って繁栄して、何千という中産階級の労働者を支えた。スティーブ・ジョブズが驚くべきアイディアを思い付いた時、彼と彼の同僚は巨万の富を得たが、おこぼれは遥かに少なかった。後に続いて繁栄した中産階級は存在しなかった。従って、上位1%に何が起きたかを理解するのは、全体像を理解する上で重要である。

その一方でサマーズは、教育は重要ではあるものの、格差解消の決め手にはならない、という見方を示している。その理由としては、以下の4点を指摘している。

  1. 2030年時点の労働力人口のおよそ2/3は既に学校を出ている。
  2. 我々が目にする格差の多くは、高卒同士もしくは大卒同士という同じ教育程度のグループ内のものであり、高卒と大卒の間のものではない。
  3. 大卒内の格差は高卒内の格差よりも幾分大きい。
  4. 教育を変えることは、上位1%の所得シェアが上がっていくこと――それこそが格差の現象で最も重要なものなのだが――に大して影響を与えそうにない。

サマーズは、中産階級の所得上昇が最重要課題であるとして、そのために格差を改善することが必要だと述べている。そして、格差の改善のために以下の3つを提唱している。

  1. 累進課税の強化
  2. 経済的レントへの課税
  3. 仕事ではなく労働者が不足気味となる高圧経済へのコミットメント