5年の経験から得られた7つの洞察

28日29日にはMostly Economics経由でBIS年次総会でのアンドリュー・クロケット記念講演を紹介したが、今日はMostly Economics経由でBIS年次総会でのオープニング講演を紹介してみる。講演者はBISのチーフエコノミスト兼金融経済部門責任者のスティーブン・チェチェッティ(Stephen G Cecchetti)で、これが5回目にして最後のオープニング講演との由。


内容は簡潔で、彼が危機から得た、経済研究にとっての2つの洞察と、政策にとっての3つの洞察と、BISにとっての2つの洞察を提示している。


以下は経済研究にとっての2つの洞察。

  1. 思ったより量は重要
    • ここで彼は、国際的な投資ポジションが1990年代半ばには世界GDPの50%程度だったのが、今や150%に達していることを例として挙げている。
    • 価格だけではなく量も重要。しかもネットだけではなくグロスも重要。
  2. 思ったよりモラルハザードは問題
    • 「潰すには大きすぎる」金融機関に当局の支援を見込んで市場は安易に資金を提供し、結果、システマティックリスクの過小評価と、金融機関側の同リスクの積み増しにつながってしまう。


以下は政策にとっての3つの洞察。

  1. 短期金利だけでは十分ではない
  2. 高水準の債務は成長の足を引っ張る
  3. 市場規律だけでは十分ではない

このうちの第2点についてチェチェッティは、ラインハート=ロゴフではなく(本ブログでは以前ここで紹介した)自らの研究を引き、政府債務の増大に警鐘を鳴らしている。


以下はBISにとっての2つの洞察。

  1. 思ったより国境を越えた活動は重要
  2. グローバルな問題にはグローバルな解決策が必要