パイプラインとゲーム理論

ロシアから欧州への3つのパイプライン計画を巡る話は日本でも様々に報じられているが(例:このレポートや各パイプラインについてのWikipediaの説明[ノルド・ストリームサウス・ストリームナブッコ])、それにゲーム理論を当てはめた論文がEconomic Logicで紹介されている

以下はその要旨。

We use cooperative game theory to analyze the strategic impact of three controversial pipeline projects. Two of them, Nord Stream and South Stream, allow Russian gas to bypass transit countries, Ukraine and Belarus. Nord Stream’s strategic value turns out to be huge, justifying the high investment cost for Germany and Russia. The additional leverage obtained through South Stream, in contrast, appears small. The third project, Nabucco, aims at diversifying Europe’s gas imports by accessing producers in Middle East and Central Asia. The project has a large potential to curtail Russia’s power, but the benefits accrue mainly to Turkey, while the gains for the EU are negligible.
(拙訳)
我々は協力ゲーム理論を用いて、話題の3つのパイプライン計画の戦略的影響を分析した。そのうちのノルド・ストリームとサウス・ストリームの2つでは、ロシアのガスを輸送するのにウクライナベラルーシという中継国を迂回できる。ノルド・ストリームの戦略的価値は莫大で、ドイツとロシアの巨額の投資コストを正当化できることが分かった。対照的に、サウス・ストリームによって得られる追加的効果は小さいと思われる。3つ目のナブッコ計画は、中東や中央アジアの産出国にアクセスすることにより欧州のガス輸入の分散化を図っている。この計画はロシアの交渉力を大きく減じる可能性があるが、その利得は主にトルコに生じ、EUの利得は微々たるものとなる。