お前が言うか、という気もするが、アンドレイ・シュライファーが表題の記事をvoxeuに書いている。マンキューやEconomist's Viewがリンクしているほか、Mostly Economicsが各段落の最後の文章を抜き出すという形で簡潔にその内容をまとめている。
以下はその7項目の概略。
- 改革者は成長軌道への早期の復帰を当てにしてはいけない。経済の移行というものは時間が掛かる。
- 移行に信を置け。資本主義体制は本当にうまくいく。
- 改革者はポピュリストたちの反乱を恐れる必要は無い(実際にそうした反乱は皆無だった)。その代わり、新しく台頭してきたエリートたちが政治を奪取してしまうことを恐れよ。
- 当時、制度をまず整備せよとか、政府が企業の民営化の準備をせよとか、バウチャーと投信のどちらの民営化方式が良いとか、ケースバイケースの民営化が良いとか、様々な理論が改革を巡って取り沙汰されたが、今にしてみれば奇妙な議論だったように思われる*1。改革者は自らのコントロールする力を過信してあれこれ介入するが、ベラルーシ、ウズベキスタン、トルクメニスタンといった例外を除けば、手法は異なれど結果は似たようなものであった。すなわちすべての国で、民営化、マクロ経済の安定、市場経済を支える法律や制度の改革は達成された。教訓:市場への移行をあれこれ事前に計画することにはさして意味は無い。きちんとした改革を望むあまり改革を遅らせるようなことがあってはならない。
- 経済学者はインセンティブを強調し過ぎ。社会主義経済理論ではインセンティブを過大評価し、人的資本を過小評価していた。市場への移行は、より良いインセンティブを持っていた古い人々ではなく、新しい人々によりなされた。インセンティブを用いたとしても、古い犬に新しい技を教え込むことはできない。
- ロシア危機は当時20年の後退をもたらすと言われたが、1999-2000年には急成長を取り戻した。東アジア危機やアルゼンチン危機でも似たようなことが起きた。債務再編は恒久的な傷跡を残すとは限らない。こうした実例は、国際社会から警告を受けるのが常である改革者に重要な教訓を与える:危機にパニクるな、それは意外に早く過ぎ去る。
- 中所得国は最終的には民主主義体制に歩み寄るとしても、その歩みは資本主義体制への移行ほど直接的でも一貫したものでも無い。