パープル・レイン

ならぬパープル・タックス・プランなるものを、ボストン大学のローレンス・コトリコフ教授とAndrew Weiss名誉教授が、ブルームバーグコラムで提案しているマンキューブログ経由)。


その提案の内容はごく単純で、現在の複雑怪奇で不平等な米国の個人と法人の所得税、ならびに相続税贈与税を、17.5%の売上税と15%の所得・資産税に集約してしまえ、というもの。


この新制度では、15%の所得・資産税を予め払っていれば、17.5%の売上税は払う必要は無い。逆に、17.5%の売上税を払うことは、購買力を 1 - 1/1.175 ≒ 0.15 だけ低下させることになるので、15%の所得・資産税と等価である、というのがコトリコフらの主張である。


共和党は富裕層優遇となる逆進的な売上税を好み、民主党は富裕層に課税する累進的な資産税を好むとされている。しかし実は両者とも間違っており、2つの税制は等価なのだ、と彼らは言う。従って、この提案は両者の好みに合うはずだ、と彼らは主張する*1


とは言え、売上税が貧困層の負担になることは間違いない――コトリコフらはそのことについて、消費に対する税は逆進的(regressive)でも累進的(progressive)でもなく単に比例的(proportional)なのだ、と述べている――ので、そうした層への還元措置を彼らは併せて提案している。その還元額は家計の人数と年齢構成によってのみ決められ、毎月支給される。それにより、貧困ライン以下の家計のネットベースの納税額はゼロになる、とのことである(具体的には4人家族で年額$3,891という数字を挙げている)。
これは貧富に関わらず支給されるが、富裕層に取ってははした金に過ぎないものの、貧困層に取っては大きな額なので、税制の累進性を維持することになる、と彼らは言う。この還元措置は、共和党系ならば税金の払い戻し(tax rebate)、民主党系ならばdemograntと呼ぶだろう、と彼らは書いている。


それ以外に、彼らは以下のような追加措置を提案している。

  • 経済的に困窮している者は、住宅に関係するサービスに対する消費税の支払いを、利子付きで延期できる。
  • 社会保障とメディケアを賄う給与税(payroll tax)については、課税所得上限(現在$106,800)を撤廃し、より累進的なものとする。
  • 被雇用者の給与税支払いは、収入の最初の4万ドル分については免除する。その4万ドルという数字は、実質賃金の伸びに合わせてスライドさせていくものとする。
  • 企業の所有権という形で支払われた賃金に対しては給与税を課す。
  • 贈与もしくは相続で得たすべての財産に対し、直接か信託経由かを問わず、百万ドル超の累積額について15%の税金を課す。
  • 移行措置として、将来に税金が掛かる予定だった年金や退職口座の資産や、保有資産の未実現のキャピタルゲインにも課税する。


コトリコフらはこの新税制案を説明するサイトを立ち上げると共に、同サイトで支持の署名も呼び掛けている。

*1:はっきりとは書いていないが、この提案をパープル税制度と名付けたのは、共和党(赤)と民主党(青)の色のミックスという意味合いかと思われる(ちなみにこの両党の色分けの由来についてはこちらの解説が参考になる)。