Economics Lovers Liveへのコメント

田中秀臣氏のブログEconomics Lovers Liveのコメント欄が復活したので、早速コメント…ではなく、取りあえず過去に小生がコメントした分をサルベージしてみる(ということで、今日は手抜きエントリ)。

2007-06-19 インタラクティヴ読書ノート別館の別館ネタでのコメント

[デフレと経済成長率の関係を否定したAtkeson=Kehoe論文への批判]

暇人 2007/06/22 00:50
Atkeson,KehoeのFigure3を見ると、Pre-1939以外の点は見事にInflation=0線の右側に来ていますね。つまりこのグラフには、1940年以降、大恐慌の教訓を活かしてデフレには陥るまいと各国の中央銀行が努力した成果が表れている気がします。そう考えると、これを以ってデフレと恐慌の関係が消えたという分析は、因果関係を取り違えているという気がいたします。
(ちなみに、同じようなことを前にもどこかで書いたな、と思ったら
http://www.ichigobbs.net/cgi/15bbs/economy/0755/649
でした。この時も小林氏RIETI論説がきっかけでした。)

ちなみに上でリンクを張ったichigobbsのレスは以下の通り。

649: 割り込み失礼  2004/05/02(Sun) 17:33
皆さんの話されているのはこの論文ですよね。
http://minneapolisfed.org/research/sr/sr331.pdf

Table1を見ると有意(t値>2)なのはExcluding Great Depression & Excluding WW,
Pre-1939, All Episodesの3つの回帰。
(Great Depressionが非有意なのは意外な気もするが、これはサンプル数が少なすぎるからかな)

この表を見るとむしろ相関が消失した戦後期が特異なように思われますね。
これは
ケインズ政策の浸透
・70年代〜80年代初めのスタグフレーションの存在
によるような気もしますが、いかがでしょうか。

2006-11-26 清算主義の復讐でのコメント

斎藤誠氏の利上げ論への批判]

暇人 2006/11/30 22:20
http://www.econ.hit-u.ac.jp/~makoto/essays.html では「【明らかに情勢判断を誤ったもの】(深く反省しています)」というカテゴリーもあるのですが、もっと反省して欲しい論文が他にあるだろう、という気がします。
金融政策に関するこの人の論議は、たとえるならば、蛇口をいっぱいまでひねったのに水量が足りない、じゃあポンプの水圧を上げようか、といった方策を考えるのが普通のところで、蛇口をいっぱいまでひねったために蛇口の回転と水量との関係が失われてしまった、だから蛇口を少し閉めてその関係を取り戻そう、と言っているように聞こえます。(消火活動の最中にそれをやったら普通殴られるだろうな・・・)

暇人 2006/12/02 02:35
田中先生、お褒めに預かり恐縮です。
ちなみに白状しますと、この比喩は、まさに通りすがりさんご指摘のキムタケ批判に関するBUNTENさんの下記エントリを読んで思いついたものです。
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/b0056.html#b20031203054445

2006-09-21 運命だ、逃げられないwでのコメント

[量子ファイナンス工学への慎重論]

暇人 2006/09/22 12:44
保守的な立場からコメントさせていただきますと、現段階では量子力学ファイナンスへの応用は数学的手法の応用に限るべきで(その数学的手法が純粋数学の立場からは厳密ではないというのはthorysgaryさんの指摘のとおりですが)、それ以上を持ち込むのはトンデモの域に入ったとの謗りを免れないと思います。つまり、株価を確率過程と考えた場合(これをトンデモという人はいないでしょう)、たとえば無裁定条件やCAPMからオプション価格を導こうとすると確率微分方程式(SDE)が出てくる、それを解くためにファインマン経路積分の落とし子であるファインマン=カッツ方程式(http://en.wikipedia.org/wiki/Feynman-Kac_formula)ないし伊藤のレンマを用いて偏微分方程式(PDE)に変換する、というのは問題ないでしょう(というか、そうした手法がBSを源流とする現在のデリバティブ研究の基本)。しかし、そこで現れる分布関数について株価の確率分布であるという以上の解釈をしたり(株価の波動関数だのドブロイ波など)、あるいは株価の量子化や相補性原理や不確定性原理まで持ち込もうとしたら、ちょっと待てよ、ということになると思います。
まあ、http://www.moneyweb.co.uk/humour/qcash.htmlのようにギャグでやれば別ですが・・・。

暇人 2006/09/26 00:35
>ちょっと待つどころか、株価の波動関数、不確定原理の適用などしっかり??やっているようですよ

何か凄そうですね。読んでみたい気もしますが、1万円超とは・・・。
この本の書評がないかと少しぐぐってみたのですが、amazonのCustomer Reviewsではfirst person to review this item待ちの状態ですし、
http://www.pro-physik.de/Phy/bookReviewDetail.do;jsessionid=807EF5FEA77546AE657DF6D16431B8BE?mid=3&brid=22222
はドイツ語だし(google翻訳で英語に訳してもいまひとつ意味不明)、
http://www.springerlink.com/content/t02jn07069u5g770/
は有料だし、という感じであまり釣果はありませんでした。その代わり、
http://www.physics.princeton.edu/www/jh/finance_and_physics_article_1.pdf
という記事を見つけたので、ご参考まで。(このテーマについて比較的分かり易くまとめていると感じました)

2006-07-17 ヴィクセル的枠組みでの整理でのコメント

[フィッシャー式でインフレ率が内生変数になると考えている人への批判]

535 2006/07/19 00:32
あとは
http://www.ichigobbs.net/cgi/15bbs/economy/0885/529-536
で論じられたような「フィッシャー式逆さ眼鏡派」ないし「市場実質利子率と均衡実質利子率を混同派」もいます(いました)ね。

(この時のハンドルネーム535は、リンクしたichigobbsのレス番号)



[追記]

2008-01-18 モーニング娘。の経済学でのコメント

暇人 2008/01/19 12:18
ハロプロと経済学の双方に関心を持つものとして大変興味深く読ませていただきました。

ハロプロが独占者として振舞っていて」という田中先生の前提は結構核心を突いていると思います。たとえば
http://mov-acl.cocolog-nifty.com/moving_acl/2005/05/post_2ba8.html
に書かれているように、現在のハロプロはかつての国民的アイドル路線とは事実上決別して、比較的狭いが盲目的に忠誠を誓うモーヲタ相手の市場に特化したビジネスモデルになっているというのが巷間(といっても主に2ch狼板ですが)良く言われていることです。また、グッズ販売が大きな収益源になっているようですので(最近では使用済みのコンサート衣装を切り刻んで売ったりしているようです、いや冗談ではなく)、その点でも田中先生の分析に適合しているのでは、と思います。

あと、yyasudaさんのコメントで紹介されたネイルバフについてですが、「Nalebuff bundling」でぐぐってみるとただで読める論文が結構引っ掛かってきました。その中の「Bundling」では、価格面ではなく競争相手のエントリ阻止の観点からバンドリングを分析しているようです。そこでふと思ったのですが、ハロプロの競争相手に対する強みは、TBの「躁うつ病高齢ニートの映画・TV・床屋政談日誌」さんの指摘にあるそもそもの参入壁の高さに加えて、ソロから大人数までのバリエーションをバンドリングしていることにあるのではないでしょうか? 競争相手がアイドル市場に乗り込もうとしても、ソロでもデュオでもトリオでもそれ以上の大人数でも、ハロプロ側は対抗商品を取り揃えているわけです(もっとも、最近はソロでは後藤真希が脱落し、デュオではWもGAMも崩壊し、本体も視聴率が1%割れ、という踏んだりけったりの状況にはありますが)。

以上、思いつくままにコメントさせていただきました。長文失礼しました。

2008-01-21 ベイジアン合理性がアカデミックの共通規範か?でのコメント

暇人 2008/01/23 20:11
> Bundling Information Goods: Pricing, Profits, and Efficiency

ここでドラフトが読めるようです。
http://pages.stern.nyu.edu/~bakos/big/big.html

この中に
”bundling could increase sellers’ profits when consumer valuations for two goods were negatively correlated”
という一節がありますが、2ch狼板でのヲタ同士の互いの推しメンに対する凄まじい罵り合いを見ていると、この条件も現在のハロプロでは結構満たされているのかな、という気がします(苦笑)。その意味ではつんく♂の「似た子は採らない」という方針は、本能的にそれを理解していたことを示しているのかもしれません(もっとも最近の採用は実は山崎UFA会長が決めているという噂もありますが…)。