賭けのリードの法則

昨日はノグラボフォーラムの過去の投稿を拾ってきて紹介したが、その時別の小生の投稿も見付けたので、今日はそれをこちらにアップしてみる。


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投稿時間:2006/07/25(Tue) 20:04
投稿者名:暇人
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タイトル:7/29記事について

週刊ダイアモンド7/29号で野口先生は以下のように書かれていますが

ファンドとは、自分の資産でなく、他人の資産を運用するものだ。もし仮に村上世彰氏が優れた投資法を知っていたのだとすれば、バフェットのように自分の資産を運用したはずであり、他人の資産を運用するはずはない。

これは必ずしもそうとは言えないのではないでしょうか? 自己資金が限られている場合、他人資本を入れてスケールメリットを追求するのは手法として有り得る話だと思います。
仮に10%の収益をあげる手腕を持っていたとすれば、個人の資金3000万円を運用して300万円得るより、10億円の資金を集めて20%の成功報酬(10億×10%×20%=2000万円)を受け取る方が遥かに収入が高くなります。

(バフェットのようにバリュー株の長期投資という手法を取らず、短期の値ざや稼ぎを狙うならなおさらでしょう)




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<以下は同じスレッドの他の投稿者の質問への小生の回答>
投稿日 : 2006/09/27(Wed) 20:59
投稿者 : 暇人
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タイトル : Re^2: 7/29記事について

週刊ダイアモンド7/29号で野口先生は以下のように書かれていますが
「太郎または花子が二万回のすべてで勝ち続ける確率は、引分が二万回続く確率より156倍も多いのだ」
どなたか、この法則が分かる方、教えて頂けないでしょうか?

この文章の前は「太郎と花子の二人が、コインを二万回投げて、裏か表かを当てるゲームを行なうとする。その結果は、われわれが抱いている直感とは著しく異なるものになる。」ですが、これはゲームの正確な描写ではないと思います。というのは、これはピーター・L・バーンスタインの「証券投資の思想革命」(東洋経済新報社;原題"Capital Ideas")の第7章「PQ:パフォーマンス能力指数」から引っ張ってきたものと思いますが(pp.160-161)、そこでは次のように記されているからです。
「例えばピーターとポールがコイン投げをしてどちらが多く表か裏か言い当てられるか競争したとしよう。その結果は、我々が抱く直観を裏切るものがある。彼らが2万回コインを投げて、当りの累計を記録していくとしよう。このゲームの途中では相手をリードしている状態が、どちらのプレーヤーにもほぼ半分の確率であるだろうか? 否、きわめて疑わしい! 裏であれ表であれ、2万回のすべてで一方が相手をリードし続けて終わる確率は、1万回対1万回の引分けで終わる確率よりも156倍も多い。技能と一貫性の証明であるかにみえるものが、実は単なる偶然にすぎないことが多いという例である。」
なお、野口先生はこれがバフェットの挙げた例だとしていますが、この本にはそうした記述はありませんので、バーンスタイン自身が考えた例かと思われます(上記の引用の後、段落を換えて、「もともとウォーレン・バフェットが言い出したコイン投げの確率問題を考えてみよう。仮に2億2500万人のアメリカ人全員がコイン投げのコンテストに参加し、各人が掛金1ドルから始めて毎日1回コインを投げて裏か表か当てることにする。」と続きますので、その「コイン投げの確率問題」が前段落の例も含むものと誤読されたように思われます。実際には、「仮に」以降の記述の分のみがバフェットの挙げた例と思われます。ちなみにこちらの例は、ダイヤモンド記事で野口先生も「バフェットはさらに言う。二億二五〇〇万人のアメリカ人すべてが、毎日一回ずつ行なわれるコイン投げゲームに参加するとする。」として引き続き引っ張ってきているものです。[余談ですが、ここまで構成を真似したら、あらぬ疑いを招かないためにもせめて引用元を書いておいた方が良かったような気がします])。

それで、本題の確率問題の話ですが、調べてみると、これは確率の世界では賭けのリードの法則とか逆正弦法則とかいう名前で知られているもののようです。簡単にギストだけ把握するならばhttp://www.asamiryo.jp/pers7.html、真面目に勉強したいならばhttp://www.dartmouth.edu/~chance/teaching_aids/books_articles/probability_book/amsbook.mac.pdfのpp.5-6のExample1.4、p.494のTheorem12.4、およびそこに至る説明を読むのが良さそうです(このダートマス大のサイトではシミュレーションできるjavaまで用意されている;http://www.dartmouth.edu/~chance/teaching_aids/books_articles/probability_book/bookapplets/chapter1/HTLead/HTLead.html)。
[ただ、式の通りに計算すると156倍ではなく、176倍になってしまう・・・。http://mathcentral.uregina.ca/QQ/database/QQ.02.06/john2.htmlにあるように、片方が全リードする確率が88倍なので、88*2=176。]