有名ブログによる論文へのリンクの効果

について世界銀行の研究者(David McKenzie, Berk Özler)が論文を書き、概要を世銀ブログで報告しているMostly Economics経由のMarginal Revolution経由)。


その主旨は以下の4枚のグラフ*1に集約される(著者たちはブログの副題で「check out these cool graphs!」と自慢している)。


これらは有名ブログでリンクされた後に論文の要旨のビューとファイルのダウンロードがどのように変化したかを示している。見ての通り、リンクされた途端にいずれも跳ね上がっている。


著者たちはこの研究をするに当たって

  • ブログがRepecにリンクした論文
  • ブログがリンクした段階で3ヶ月以上経過している論文

という2つの条件を満たしたものを対象にしたという。前者はビューとダウンロードの統計を取得するためであり、後者はブログリンクの効果を検証可能な形で取り出すためである。


また著者たちは効果を定量的に測定するための回帰分析も行っており、以下の結果が得られたという。

  • ブログがリンクした月の要旨ビューの上昇幅は:
    • Aid Watch、Chris Blattman:70-95
    • Economix:135
    • Marginal Revolution:300
    • Freakonomics、クルーグマン:450-470
  • 通常時の要旨ビューと比較すると、例えばFreakonomicsの1回のリンクは3年分に相当するビューをもたらす。
  • とは言うものの、実際にリンクをクリックするのは、人気ブログの場合で読者の1-2%、Chris Blattmanのような専門性の高い読者を有する場合で4%といったところだろう。
  • リンクされた月だけではなく、翌月にも上昇が見られる(=皆がブログエントリを即日読んでいるわけではないということ)半面、要旨ビューや論文ダウンロードの上昇がブログで取り上げられるきっかけになった、という逆の因果関係は見い出されなかった。

*1:ブログではそのうちの3枚を掲載しており、ここではそれらをimg src文でリンクしている。Figure 1のクルーグマンのグラフはブログにはなく論文にのみ掲載されている。逆に、Marginal Revolutionのグラフは論文には無い。