地産地消は環境に良くない

とEd Glaeserがボストングローブに書いている(原題は「The locavore’s dilemma」;Economist's View経由)。


その理由は以下の通り。

  • 2008年のカーネギーメロン大学の2人の研究者の調査によると、米国産の食物の消費は一家計当たり年間8.9トンのCO2に相当する温室効果ガスを生み出す。そのうち食物の配送から生み出されるのは0.4トンである。また、農作物の供給網上の輸送から生み出されるものの総計は一家計当たり年間1トンである。
  • 我々は、配送を縮減することによる環境へのベネフィットと、食物を必ずしも最適ではない栽培地で生育することによる環境へのコストを比較衡量する必要がある。例:
    • 最近の英国での調査によると、英国産のトマトの消費はスペイン産のトマトの消費の約3倍の温室効果ガスを生み出すという。寒い英国でトマトを生育することによって費やされる余分なエネルギーと肥料は、輸送の削減効果より圧倒的に大きい。
    • ニュージーランドの子羊の生み出す温室効果ガスは英国の子羊より少ない。
    • バークレーの大学院生のSteven Sextonの推計によると、米国がとうもろこしの国産への切り替えを推し進めることにより、35%の肥料と22.8%のエネルギーが余計に必要になる。
  • (ボストンで提案されているような)都会で農業を行うことの最大の環境コストは、人口密度の減少による自動車運転の増加。
    • 今日の米国では、6000万エーカーの都市部に2.5億人が居住している。即ち人口密度は1エーカー当たり4人。
    • 一方、耕作地に使用されているのは4億4200万エーカーで、牧草地に使用されているのは5億8700万エーカー。米国人一人当たりに換算すると、それぞれ1.4エーカーと1.9エーカー。もしこうした農作地の7.2%を都市部に割り当てると、都市部の人口密度は半減する*1
    • National Highway Travel Survey*2によると、人口密度が半減した場合、都市部内の配置が変わらないとすると、家計は年間107ガロンのガソリンを余計に購入する。もし都市部内の距離も倍増するものとすると、さらに44ガロンが追加される。それらは合わせて1.77トンのCO2に相当する*3。これは農作物の供給網上の輸送から生み出されるものの総計の1.77倍であり、食物の配送から生み出されるものの4.5倍近くである。
    • 人口密度の半減(=一人当たり0.24エーカーの農作地の追加)は極端にせよ、仮に一人当たり0.05エーカーの農作地の追加が(思いっ切り効果を多めに見積もって)食物の配送の環境コストを半減するとしても、それによる一家計当たりのガソリンの消費の増加は41ガロンであり、食物配送削減による温暖化ガス節約分の2.4倍に相当する*4

Glaeserは最後に、ミシェル・オバマが環境問題に寄与したいならば、家庭菜園を作るよりはアパートの高層化を訴えた方が良い、と結んでいる。

*1:5.87+4.42=10.29億エーカーなので、その7.2%は7409万エーカー。ここでGlaeserはそれを都市人口2.5億人と総人口3.1億人の比でさらに割り振って、都市の農作地が7409*2.5/3.1≒6000万エーカーだけ増える(=倍増する)、という計算をしているように見える。

*2:National Household Travel Surveyの誤り?

*3:1.77/(107+44)*1000=11.7なので、ここでGlaeserは1ガロン当たり11.7kgのCO2を生み出すものとしているように見える。ここでのトンが米トンだとすると、1.77/(107+44)*907.18474=10.6kg。いずれの数字も、8.8kgという一般的な見積もりよりも多い。

*4:(41*0.0117)/(0.4/2)=2.4。