シラーの住宅価格指数は誤り?

少し前に、トーマス・ローラーというファニーメイ出身のエコノミストがシラーに噛み付いたというWSJ記事があった。ローラーは、シラーが計算した過去100年の米国の住宅価格の推移を示す指数には誤りがある、と主張しているとのこと。


記事によると、シラーの住宅価格の計算は、以下のように複数の推計をつないだものになっている。

  • 1890-1934: レオ・グレブラー率いる3人の経済学者のデータを使用
  • 1934-1953: 当時の新聞の売り家広告の価格からデータ作成
  • 1953-1975: 米労働局統計(BLS)の指数を使用
  • 1976-1986: ファニーメイフレディマックの監督局の指数を使用
  • 1987-   : S&P・ケース・シラー指数を使用

このうちローラーが特に問題にしたのは、1953-1975年のBLSの指数を用いた期間。彼によると、BLSの統計はサンプル数が少なく、信頼性が低いという。シラーの指数では1940年から2000年までの住宅価格のインフレ調整済み上昇率は年率0.7%となっているが、センサス局の同期間の同上昇率は2.3%となっている。シラーは、これを、センサス局の指数は住宅の質の向上を反映しているためだとしているが、ローラーはそれですべての乖離が説明できるか疑問視している。


このように長期トレンドを低く見積もっているため、シラーの指数を使うと、住宅価格はトレンドに戻るまであと13%下がる必要があるが、ローラーが補正した指数では既にトレンドにほぼ戻っていることになる(記事では両者の比較グラフも載せている)。


なお、記事のコメント欄では、ローラーの売名行為ではないか、という冷ややかな見方のほか、ローラーの補正した指数でも1980年以降は動きに差がないではないか、という指摘が見られる。