カバレロの金融改革案

一昨日はFTエコノミストフォーラムサイトにおけるガイトナー・プランへのカバレロを初めとする経済学者の見解を紹介したが、今日は同じサイトに書かれたカバレロの金融改革案を紹介する。


ここでカバレロは、またもや一般的な見解に挑戦する。現在世間でよく言われるのは、レバレッジの掛け過ぎが今回の事態を招いたのだから、金融機関に対し自己資本をもっと積むように規制を強化せよ、という意見である。それに対しカバレロは、その必要はない、それは資源の無駄だ、と異論を唱える。というのは、金融機関の役割というのはあくまでもミクロ経済における資源の再配分であり、それには自己資本は実はそれほど必要ない。自己資本が必要になるのはマクロ経済的な大きな衝撃に対応する場合であるが、それに対応するのは民間ではなく政府の役割である、というのがカバレロの主張である。


では、政府はどのようにしてマクロ経済的な衝撃から民間の金融機関を守るのか? それは「最後の保険者(insurer of last resort)」としての役割を引き受けることによってである。政府が提供する保険により、金融機関は、いざという時のためのショック・アブソーバーとしての膨大な自己資本を積む必要がなくなり、ミクロ経済的に効率的な資源の再配分という本業に邁進できる。これがカバレロの提案する今後の金融システムのあり方である。


もちろん、モラルハザードの問題を避けるため、政府は金融機関をこれまでよりも遥かに厳しく監督する必要が出てくるが、その必要性はいずれにしろ今日誰もが認めるところである。それに、現在結果的に政府が事後的な保険者として振舞っているのだから、それを予め制度化してしまえば良いではないか、とカバレロは指摘する。


また、カバレロは、自己資本を積み増すことはデレバレッジにほかならないが、そのデレバレッジの進行こそが、現在の経済の縮小をもたらしている、従って政府の保険者としての役割を拡大することは、現在の危機の解決策としても役立つ、と述べている。


コメント欄では賛否両論が見受けられるが、やはりモラルハザードの問題が一つの論点になっている。その中で、このサイトの主宰者であるマーティン・ウルフが最も強硬な反対論を述べて、やはり金融システムを抜本的に作り直す必要があるのだ、と書いているのが面白い。