ロボットは我ら:人間の置き換えに関する幾ばくかの経済学

ジェフリー・サックス、ローレンス・コトリコフらが表題のNBER論文を書いている。原題は「Robots Are Us: Some Economics of Human Replacement」で、著者はSeth G. Benzell、Laurence J. Kotlikoff、Guillermo LaGarda、Jeffrey D. Sachs(サックスはコロンビア大学地球研究所長、他はボストン大学)。
以下はその要旨。

Will smart machines replace humans like the internal combustion engine replaced horses? If so, can putting people out of work, or at least out of good work, also put the economy out of business? Our model says yes. Under the right conditions, more supply produces, over time, less demand as the smart machines undermine their customer base. Highly tailored skill- and generation-specific redistribution policies can keep smart machines from immiserating humanity. But blunt policies, such as mandating open-source technology, can make matters worse.
(拙訳)
内燃機関が馬に取って代わったように、賢い機械が人間に取って代わるのだろうか? もしそうならば、人々が職を失うこと、あるいは少なくとも良い職を失うことは、経済をも休業状態に追い込んでしまうのだろうか? 我々のモデルの答えはイエスである。然るべき条件の下では、供給が増加すると、時間が経つにつれ、賢い機械が自らの顧客基盤を切り崩すことにより、需要は減少する。ある技能や世代に非常に特化した再配分政策は、人間が賢い機械によって惨めな状態に陥るのを防ぐことができる。しかし、オープンソース技術を義務付けるようななまくらな政策は、事態を悪化させ得る。


この論文を紹介したWSJReal Time Economics記事によると、著者たちが特に注目したのは産業ロボット用のコードだという。好況期に良いコードが十分に蓄積されると、新しいコードへの需要が減り、そのためにハイテク業界の賃金が下がり、ひいては貯蓄と投資の低下、および資産の蓄積の減少につながるのではないか、とのことである。コードが溢れている一方で資本の価格が高止まりし、完全雇用が達成されている一方で皆の給与が少ない、という状況を著者たちは予見している。彼らに言わせれば、それは、賢い機械が人間に取って代わった挙句、資金供給者の手を噛むような状況である。
著者たちが提案する対策の一つが、好況期に技術のブレークスルーによって利益を得た労働者に課税し、それを不況期の給付に充てる、というものである。それによって資本供給の安定化を図るのだという。