今度の騰貴は投機?

平家さんが原油価格が今年1月から6月にかけて5割も値上がりしていることを「少しきな臭い原油市場」というエントリで指摘している。


それでも前年同期に比べれば半分の水準ではあるが、昨年の原油価格高騰については投機が原因ではない、という論陣を張ったクルーグマンも、今回は投機が原因という観測を示している。というのは、今回は前回見られなかった在庫の増加が見られるからである。

クルーグマン今月初めのOp-ed(邦訳はここここ)では、その投機の犯人の一人として、NYT記事を元に、シティを名指ししている。


また、一ヶ月前には、G8サミットに合わせて、ブラウン英首相とサルコジ仏大統領が連名で原油価格の乱高下を懸念する論説をWSJ寄稿し原油先物市場の監督と透明性を高めて価格の変動を抑えるべき、と提言している。


一方、The Baseline Scenarioのサイモン・ジョンソンは、この英仏首脳の論説を取り上げ、原油先物市場規制の動きを歓迎しつつも、最近の原油価格上昇はむしろG8の各国政府に責任がある、と政策要因に原因を帰しているMarginal Revolution経由)。
ジョンソンの指摘する政策要因とは以下の3点。

  1. 政府当局は世界経済はもう大丈夫、と言って市場を元気付けようとしているが、実際のデータはその言葉を裏切っている。これが原油価格の変動を生むのは当然。
  2. 彼らは温暖化対策の合意形成失敗と原油価格に関連は無い、と言うが、無いわけが無い。温暖化対策問題でバタバタすれば、エネルギー市場(従来エネルギー、代替エネルギー双方の)への投資がぐらつき、原油の価格変動につながる。
  3. 各国中央銀行の金融緩和政策で、商品市場のビッグ・プレイヤーたちの資金コストが下がり、大きなポジションを取れるようになった。これに「大きすぎて潰せない」という当局の態度と「取引収益で資本を増強する」という金融機関と当局の暗黙の合意を掛け合わせれば、今後数ヶ月、大手金融機関が商品市場で相場を大きく張るのは目に見えている。

従って、真の投機家はG8の政府である、というのがジョンソンの結論である。