米国民は耐久消費財をもう買わない?

レベッカワイルダーが、米国の消費における耐久消費財の役割の低下について興味深い2枚のグラフを示している


一つは、消費の主役が消費財からサービス財に交代したことを示す長期時系列のグラフで、それを見ると、1940年代には消費の6割以上を占めていた消費財が現在は3割台にまで低下した結果、60年前は4割を切っていたサービス財の割合が現在は7割近くに達していることが分かる。

ワイルダーによれば、2009年第2四半期のサービス消費のうち25%が医療関係、29%が住宅や公共料金に向けられたとのことである。ベビーブーマーの存在を考えると、こうした支出は上昇することはあっても低下することは無いので、今後もサービス財への支出の割合は増加し、それが景気回復を支えるのではないか、というのが彼女の見方である。


また、米国民は借金をして自動車などの耐久消費財を買いまくっていた、というイメージがあるが、それは神話に過ぎず、実際には消費は大部分がサービス財に向かっていた、というのが、ワイルダーの主張のもう一つのポイントである。


その上で、彼女はもう一枚のグラフを提示する。

これによると、過去9回の景気回復時の最初の1年間の成長率6.43%のうち、耐久消費財の寄与が0.47%に過ぎなかった半面、サービス財の寄与が1.67%であったとのことである。


今回の景気回復局面でも米国民があまり耐久消費財を買わないとなると、日本の輸出産業にとってはあまり良いニュースではない。ただ、ワイルダーの1枚目のグラフを良く見ると、2008年末から2009年にかけて消費財の支出比率が一気に2%程度落ち込み、それと同率だけサービス財が増えている*1ことが分かる。これは、ワイルダーが指摘するようにサービス財には必然的な支出が大きいため、消費財が消費全体の減少の影響の大半を蒙った結果と考えられる。従って、長期的な低下傾向は変わらないものの、今回は耐久消費財について落ち込みがあまりにも急激だったため、回復局面でこれまでよりはリバウンドが見込めるのではないか、というやや楽観的な見方ができるかもしれない。

*1:両者の割合の合計は100%なので当然であるが。