コント:ポール君とグレッグ君(2009年第2弾)

(2009年第1弾はこちら。2008年以前はこちら

ポール君
我々は大恐慌以来最もデフレに近い場所にいる。民間セクターは、1930年代以来初めて広範な賃金カットを経験している。
グレッグ君
デフレが問題だというポール君の意見には賛成だけど、そんなに近いかね? 雇用レポートによると、過去12ヶ月に賃金は3.9%上がったそうだよ。通常の2%の生産性上昇率を仮定すれば、これは1.9%の物価上昇と整合的だね。そうしてみると、今のところ、広範な賃金と物価のデフレというのは、現実というより恐れに過ぎないんじゃないかい。
ポール君
ブラッド君がグレッグ君の的外れなコメントを教えてくれた。僕は数年以内のデフレの心配をしているのに、グレッグ君は我々はまだデフレではないと反応している。はぁ? それじゃあまるで利益水準が高いからまだ景気後退期ではないと言っていた連中みたいじゃないか…。
それに技術的な問題もある。グレッグ君は平均時間賃金を使ったけど、これには上方バイアスがあると考えるべきだろう。不況期には低賃金の労働者が真っ先にレイオフ対象になるからね。より適切なのは雇用コスト指数なんだが、これはもう年率で2%まで下がっているから*1、2%の生産性上昇率を考えると、インフレ率はゼロまで来ていることになるね。しかも低下傾向はまだ続きそうだ…。
グレッグ君
ポール君が平均時間賃金より雇用コスト指数の方が適切と言っているけど、それはそうかもしれない。でもその指数の伸び率はまだプラスだから、「民間セクターは広範な賃金カットを経験している」というのはやはり違うのではないかい? あと、彼は「数年以内のデフレ」を心配しているとも言っているけど、その点でも僕と意見が一致したわけだ。僕は、「今のところ、広範な賃金と物価のデフレというのは、現実というより恐れに過ぎない」と書いたからね。もしポール君が最初からそのつもりだったとしたら、僕は彼の現在形の使い方に惑わされたんだね。つまり、「経験している」というのをどういう意味と取るかによるね。


なお、ひさまつさんは、2008年の生産性の伸びは2.8%と高めだったことを指摘している。また、「expectationが大事」とポール君と同様の指摘もしている。

*1:図の0.5%は3ヶ月での変化率なので、0.5÷3×12=2。