とクイズダービー(古いな)風のタイトルにしてみたが、4日エントリで紹介したフェルドシュタインが3000億ドルの財政刺激策を提案したのに対し、クルーグマンは倍の6000億ドルという数字を出してきた。
その数字を弾き出した算式は以下の通り。
- GDP=15兆ドル
- 自然失業率=5%
- ゴールドマンの予想失業率=8.5%(現在の失業率=6.5%)
- オークン則:自然失業率を1%超えるごとに2%の需給ギャップ
→GDPギャップは[(8.5 - 5)×2]=7%、15兆 × 0.07 =1.05兆ドル
乗数を2と見込むとその半分の5250億ドルの支出が必要となるが、乗数はおそらく2まで行かないので、もう少し上積みする必要…ということで、6000億ドル。
なお、クルーグマンの財政刺激策については、kmoriさんが以前のクルーグマン論説との矛盾を突いている。
その1999年の論説でクルーグマンは日本の財政刺激策を批判しており、それが効果あるためには、
- 現在の落ち込みが一時的な要因である
- 財政刺激が自律的回復をもたらす
のいずれかでなくてはならないが、前者のケースは実際には数少なく、後者のケースでは、現在の経済が複数均衡のうちの低位均衡に陥っている、という奇妙なモデルを仮定しなければならない、と指摘している。今回の米国のケースでは、(彼が批判した日本と違って)そのいずれかに該当すると言える根拠はあるのか?、というのがkmoriさんの疑問である。
おそらくクルーグマンにもその根拠はないだろう。ただ、他に選択肢がないところまで米国が追い詰められている、というのが彼の現在の認識と思われる。実際、CNNに出演した際、そうした危機感を露にしている。そこでは、バーナンキはやるべきことはやったので、今度は政府の出番だ、と彼は述べている。
10年前、彼は、日本について、政府はやるべきことはやったので日銀の出番だ、というようなことを言っていたが、今度は米国について逆のことを言っているわけだ。
FRBがマスコミから開示を求めて訴訟を起こされるほど資産内容が悪化しているのが、上記の「バーナンキはやるべきことはやった」という発言の根拠だろう。しかし、6000億ドルという規模も半端ではない。CNNの司会者が指摘しているように、これを実行に移せば、一連の刺激策は元来の国家予算と同じ規模に達する。そうなると、今度はFRBの国債引き受け、という話が現実味を帯びてくるような気もする…。