生産性と利益は無関係?

ジャスティン・フォックスが、生産性の分析からすると米国の製造業はそれほど良い状況に無い、というブルームバーグ論説を書いた(ここここ)のに対し、Dietrich Vollrathが、業界の盛衰を測るのに生産性を使うのは筋違い、と猛反発した(H/T Economist's View)。Vollrathに言わせれば、生産性は付加価値と投入の比率に過ぎず、それ以上の意味を求めてはならないとのことである。また、生産性と利益も関係無い、と彼は言う。

Value-added is not profits, in any financial accounting sense. The closest you can get to an analog in financial accounts is to take revenues minus cost of goods sold. And revenues minus cost of goods sold is not profits. Why? Because the firm still has to pay wages, interest costs, taxes, and dividends, among other things. So firms could easily be losing money, either in the sense of having negative net profits or a negative cash flow, even though their value-added is positive. Or maybe they are making money, and then good for them. But it is irrelevant to MFP whether the firms are making money or not. MFP and firm or industry “success” are fundemantally different things. One implies nothing about the other.
(拙訳)
いかなる財務会計的な意味においても、付加価値は利益ではない。財務会計で得られる最も近い数字は、総収入から売上原価を差し引いたものである。そして、総収入から売上原価を差し引いたものは利益ではない。なぜか? 企業は賃金、支払利息、税金、そして配当などをさらに支払わなければならないからである。従って、仮に付加価値がプラスでも、純利益もしくはキャッシュフローがマイナスという形で企業は簡単に赤字に陥る。あるいは黒字になっているかもしれないが、それは結構なことである。ただ、企業が黒字か赤字かは多要素生産性とは無関係である。多要素生産性と企業もしくは業界の「成功」は根本的に別物である。片方はもう片方について何も含意していない。


これに対しコメント欄では、経済学者は財務会計が分からないのか、として以下の指摘がなされている。

  • 売上原価は、商品を生産する際に実際に掛かる費用であり、生産に関わった被雇用者に支払われた賃金が含まれている。
  • 大半の企業にとって売上原価に含まれない最大の費用は、販売・配送費である。
  • 利益を計算する際には配当は入ってこない。企業は配当を払う必要はない。また、ほとんどの場合において、配当は利益の株主への還元手法である。


会計の細部を措くとしても、両者は無関係というのはやや極論のように思われる。