金融危機に関する5つの神話

The Big Pictureの9/14エントリで、バリー・リソルツ(Barry Ritholtz)が金融危機に関する5つの神話を“喝破”している。


神話1
危機は稀な出来事が重なった「パーフェクト・ストーム」だった。
  • 実際にはその逆で、危機は不可避だった*1。それは、過剰流動性、悪しき中央銀行、特殊な法制度、規制の免除、リスク過剰、誤った報酬体系、規制の罠、および市場は効率的で人々は合理的という固い信念の帰結だった。
神話2
リーマンは救われるべきだった。
  • これは白黒がはっきり付けられる問題ではない。最良の選択肢は、よりベア・スターンズ型に近い(ただしFRBの290億ドルは抜きの)事前の一括処理による秩序ある破産および売却/清算だったと思われる*2
神話3
規制が危機の原因だった。
  • 規制ではなく、規制からの特別な免除が銀行家の暴走を許した。グラス・スティーガルの廃止、CFMA(The Commodity Futures Modernization Act=商品先物近代化法)、純資本ルールからの免除、非銀行金融機関における貸出基準の欠如の無視、ストック・オプションによる報酬の行き過ぎ、それらすべてが危機発生に寄与した。
神話4
リーマン破綻がAIGにとどめを刺した。
神話5
米国経済における住宅特有の地位が危機を招いた。
  • 住宅は米国で特有の地位を占めてきた。しかし、住宅ローン金利の減免は1世紀近く行なわれてきた。それが危機を招いたわけではない。貸出基準の弛緩が危機の根本にある。


…もっと知りたい方は下記の本参照、とリソルツは最後に自著を宣伝している。

Bailout Nation: How Greed and Easy Money Corrupted Wall Street and Shook the World Economy

Bailout Nation: How Greed and Easy Money Corrupted Wall Street and Shook the World Economy

*1:要はブラック・スワンではなかった、ということか。

*2:この考えは、ここで紹介したロゴフの「リーマンを破綻させたことの問題点は、その考え方ではなく、実行方法にあった」という主張に通じるものがある。