ホールデン の検索結果:

総裁の眉がコミュニケーションツールだった時

ホールデンの退任講演から、今回は、イングランドの一般とのコミュニケーションが変貌を遂げる前の状況を描写した箇所を引用してみる*1。 At the point I joined the Bank, central banks lived by a mantra of “monetary mystique”. This was more than just cultural. Secrecy was seen as one of the essential tools in ce…

フォワードガイダンスの進むべき方向

ホールデンの退任講演から、今回は、イングランド銀行のコミュニケーションの改善の歩みについて語った後、その一つであるフォワードガイダンスについては未だし、と述べた箇所を引用してみる。 When it comes to one particular aspect of transparency - forward guidance - I think a more fundamental rethink may be needed, however. Forward guidan…

複雑系科学が金融システムについて教えてくれたこと

引き続きホールデンの退任講演から、今回は金融の安定性について複雑系科学を参考にした話を引用してみる。 When it came to assessing risks to the financial system, unlike with monetary policy, there was no off-the-shelf model. In pursuit of one, I started looking to other disciplines for inspira…

ビールとワイン、ニットウェアとツイード

前回エントリに続き、ホールデンのBOE退任講演から、今度は金融システムの安定化政策の推移について触れた箇所を引用してみる。 At the time, the macro-monetary and financial stability arms of the Bank rarely crossed or co-ordinated. The monetary policy side dealt with the economy, at a macro level. The fi…

英国のインフレ目標の最大の危機

…ストのアンドリュー・ホールデンが、9月から王立技芸協会*1のチーフエグゼクティブという意外な転身を遂げることになったが、その退任講演がBOEのHPに上がっている(H/T Mostly Economics、hicksianさんツイート)。そこでは自分の32年に及ぶ中央銀行家としての人生において、金融政策、金融システムの安定、一般とのコミュニケーション、というイングランド銀行の主要政策がどのように変貌していったか、について語っている。 金融政策についてはインフレ目標の導入とその成…

経済学者がビッグデータに熱心でない理由

…ストのアンドリュー・ホールデンが、ビッグデータをテーマに講演している(H/T Mostly Economics)。 その中で、ビッグデータに対する経済学者とデータサイエンティストの態度の違いについて以下のように述べている。 The first thing to say is that Big Data and data analytic techniques are not new. Nonetheless, over recent years they have becom…

中央銀行家は超予測者になれるか?

…智の活用 アンディ・ホールデンが提案したような市民エコノミストの創設。 予測の競争 外部の超予測者のマクロ経済予測を、他の外部エコノミスト予測の調査結果と共に、自行の予測プロセスで活用。 中銀の超予測者 行内で超予測者を発掘・育成。 *1:邦訳:超予測力:不確実な時代の先を読む10カ条作者: フィリップ・E・テトロック,ダン・ガードナー,土方奈美出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/10/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (5件) を見るち…

マクロ経済学の学際モデル

BOEのホールデンがArthur E Turrellとともに表題のスタッフワーキングペーパーを書いている(原題は「An interdisciplinary model for macroeconomics」、H/T Mostly Economics)。以下はその要旨。 Macroeconomic modelling has been under intense scrutiny since the Great Financial Crisis, when serious sh…

マクロ経済学ですが、何か問題でも?

…14)*6とコイル=ホールデン*7は、経済学の現状を、半分満たされて半分空の状態が永続しているグラスではなく、一つが満たされて一つが空の2つのグラスとして特徴付けている。彼らの見方では、応用実証経済学者は自らの成功を寿いでいるが、マクロ経済学者は自らの失敗を悲しんでいる。 その上で、「こうした批判すべてに幾ばくかの真実が含まれているが、それはある程度までに過ぎない(All of these criticisms contain some truth, but only up …

収斂しなくなった生産性

…ストのアンドリュー・ホールデン(Andrew Haldane)が20日にLSEで行った生産性に関する講演を紹介している。それによると、ホールデンは世界的な生産性成長率の傾向について以下の3点を指摘している。 生産性成長の鈍化は英国に限った話ではなく、世界的な現象 1950年から1970年の世界的な生産性成長率の中位値は平均して年率1.9%だった。1980年以降は0.3%である。 この生産性成長率の鈍化は明らかに近年の現象ではない 多くの先進国で1970年代に始まった現象とみら…

システムのシステムと政策

…ストのアンドリュー・ホールデン(Andrew Haldane)が、OECD Insightsに「From economic crisis to crisis in economics」と題したブログエントリを上げ、複雑系理論、就中、複雑な「システムのシステム」という観点から公的政策の全体構造を捉えることを唱えている*1。ホールデンに言わせれば、経済や金融のシステムを理解するのに複雑系理論はますます使われるようになっているが(例:大手銀行をスーパースプレッダーと見做した疫学モデ…

マイケル・フィッシュ経済学

…ストのアンドリュー・ホールデン(Andrew Haldane)が、経済学の危機の予測の失敗を、英国の1987年の気象予報の失敗に例えた。 In a speech at the Institute for Government in London yesterday, Haldane compared economists’ failure to predict the 2008 financial crisis to former BBC weather presenter …

機関投資家の需要と資産価格の均衡モデル

…調査局[2013]、ホールデン[2014])なのか? 従来の資産価格モデルは、機関投資家の資産保有に相応していないため、こうした疑問に答えるのに適していない。それらのモデルにおける選好、信念、および制約についての強い前提は、投資家間の違いを(あったとしても)極めて小さなものとしている。また、資産需要が資産価格、配当、および消費の結合モーメントで厳密に決まるが、それを機関投資家の資産保有に適用するのは困難である。資産価格の実証研究は機関投資家の保有データを用いてきたが、資産需要…

経済学、どうしてこうなった

…昨日紹介したBOEのホールデンのインタビュー記事から、今日は経済学者の罪について触れた部分を紹介してみる(昨日紹介した部分の直接の続きに当たる)。 WD: In view of this narrowing of economics, many have accused economists of failing to keep an eye on what’s been actually going on, or – at worst – of deliberately e…

経済学の引きこもり

昨日に続き、BOEのホールデンのインタビュー記事から引用してみる。 Economics needn’t be restrictive. Economics as a discipline grew out of a broader concern with political economy, with sociology, with philosophy. And that was true right through until the latter part of th…

中央銀行は自らの間違いを認めよ

…OEのアンドリュー・ホールデン(Andrew Haldane)がインタビューで述べている(INET Blog経由)。 ...For most of those 318 years, I think we could have taken our authority as read. Not for all of it, but for most of those years, the Bank was a place which was respected technical…

非正規性と規制

アンドリュー・ホールデン(Andrew Haldane)金融安定化担当理事*1が経済学と正規分布について講演した(Mostly Economics経由)。 経済学で正規分布を用いることの弊害はかねてより指摘されている話であり、その点では特に新味は無いが*2、彼が最後にその問題と規制との関連について述べた部分を以下に紹介しておく。不確実性の高さによって分布の裾が正規分布より厚くなることを前提とすると、規制手法をどのように切り替えていくべきか、という話である。 ...Regula…

金融の軍拡競争

…銀行のアンドリュー・ホールデン(Andrew Haldane)金融安定化担当理事*1が講演した(Mostly Economics経由)。 ホールデンによれば、金融においてそのような軍拡競争が発生する要因は3つあるという。 情報の非対称性 どれだけリスクが取られているかを評価するのは情報の非対称性により難しいため、投資家らはランキングといった間接的な尺度に頼ることになる。 満期変換 確実な短期借り入れの不確実な長期貸しという銀行のバランスシートの構造上、投資家は、いざという時に…

サイモン・ジョンソンとディーン・ベーカーのバーナンキ批判

…担当のアンドリュー・ホールデンのいわゆる「破滅のループ(doom loop)」に関するものであった。「破滅のループ」とは、好況−不況−銀行救済のサイクルにおいて、次第に納税者への負担とマクロ経済への脅威が大きくなっていくことを指している。ジョンソンはバーナンキに、この悪循環を断ち切るために何ができるか、という問いを投げ掛けた。それに対しバーナンキは、新たな規制の枠組みで対応する、と回答したが、ジョンソンはそれを、時間的不整合性という根本的な問題に触れていない、と切って捨てた。…