AIとr*

について先月24日にブランシャールがツイートしている。

On AI and r* (inspired by the Citrini discussion).
Standard effect: If AI leads to higher growth, likely to increase r* (higher investment, lower saving).
Non standard effect: If AI leads to more inequality (enormous rents for the owners of AI, unemployment or low wages for those displaced), then likely decrease r* (saving rate of the rich much higher than saving rate of the poor).
Which way does r* go?
(拙訳)
AIとr*について(シトリニの議論*1に触発されて)。
標準的な影響:AIが高成長につながるなら、r*を引き上げる可能性が高い(投資増、貯蓄減)。
非標準的な影響:AIが格差拡大につながるならば(AI所有者の莫大なレント、置き換えられる人々の失業や低賃金)、r*を引き下げる可能性が高い(貧困層の貯蓄率よりも富裕層の貯蓄率はかなり高い)。
r*はどちらへ向かうだろうか?

https://x.com/ojblanchard1/status/2026273629084782750


このツイートに反応して自分の研究を紹介した3人のツイートをブランシャールがRTしている。

一人はシカゴ大のAlex Imasで、1/8付けのsubstackエントリ紹介している(ブランシャールは引リツで「On AI, aggregate demand, (implicitly) r*, a nice piece by Alex Imas」と誉めている)。エントリでImasは、AIによる需要崩壊モデルと貧困化成長モデルの2つのモデルを展開している。前者は自動化による労働の置き換えが急速に進むあまり失業者が増えすぎて需要が崩壊する、というモデルである。後者はロボットは我ら:人間の置き換えに関する幾ばくかの経済学 - himaginary’s diaryで紹介したSeth G. Benzell、Laurence J. Kotlikoff、Guillermo LaGarda、Jeffrey D. Sachsによる論文のモデルで、その論文は、ロボットがほぼすべての仕事を担い、賃金は低く、政府が自動化拡大に再投資しないため成長が停滞している状況を描いたアシモフの鋼鉄都市*2に部分的に触発されて書かれたものだという。

もう一人はCREI ResearchのLuca Fornaroで、4年前のMartin Wolfとの共著論文紹介している。連ツイでは、AIによる生産性と潜在生産力の押し上げが投資増につながる限りにおいては自然利子率と雇用率は上昇するが、選好の非相似拡大性により自動化がもたらした資本所得の増加は消費をあまり押し上げないので、後者の効果が十分に強ければ、自動化技術の急速な採用は自然利子率を抑制し、需要不足が経済活動を潜在力以下に抑えてしまう流動性の罠に経済を陥らせてしまうかもしれない、と解説している。これはケインズの技術的失業*3の概念に大いに関連しているとの由。

三人目はユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのLukasz Rachelで、昨年秋のBPEA論文紹介している。リンク先のまとめ記事では、AIによる生産性上昇がもたらす資本需要増と家計が望む貯蓄率の低下によって、自然利子率が今後5年で1%ポイント上昇するという見通しを示している。ツイートでRachelは、格差拡大の影響を織り込んでいないことを認め、現在作業中としている。