離散的な選択のある時のマクロの生産性

というNBER論文が上がっているungated版)。原題は「Aggregate Productivity with Discrete Choice」で、著者はDavid Baqaee(UCLA)、Ariel Burstein(同)。
以下はその要旨。

This paper quantifies aggregate productivity in general equilibrium economies where agents with heterogeneous preferences make discrete choices between locations and occupations. We show how the conventional tools of welfare economics, like cost-benefit analysis, can be extended to these settings. Following Debreu (1951), we measure the change in aggregate productivity as the maximum reduction in total factor productivity such that it is possible to make every household at least indifferent to their status quo allocation. Aggregate productivity rises if primary factors can be saved while keeping every household at least indifferent. We characterize this measure of efficiency in terms of compensated supply and demand curves. We show that, to a first-order approximation, the elasticity of aggregate productivity to productivity shocks is given by sales shares (regardless of preferences and technologies). We also provide second-order approximations in terms of elasticities of uncompensated supply and demand curves. We contrast our approach with some popular alternative measures of aggregate efficiency and welfare: real GDP, the cross-sectional average of utilities, and the sum of compensating variations, and show that these alternative measures have serious flaws.
(拙訳)
本稿は、不均一な嗜好を持つ主体が場所と職業について離散的な選択を行う一般均衡経済でのマクロの生産性を定量化する。費用便益分析のような厚生経済学の従来のツールがこうした状況にどのように適用できるかを我々は示す。デブリュー(1951*1)に従って我々は、全家計が少なくとも現状の配分に関して無差別であるような全要素生産性の最大の削減幅としてマクロの生産性の変化を測定する。この効率性の指標を補償された需給曲線で我々は特徴付ける。生産性ショックに対するマクロの生産性の弾力性は、一次近似で、(嗜好と技術に関係なく)売り上げシェアで与えられることを我々は示す。我々はまた、補償されない需給曲線の弾力性について、二次近似を提示する。我々は、我々の手法を、マクロの効率性と厚生の幾つかの一般的な他の指標――実質GDP、効用の横断面平均、補償される変動の合計――と比較し、それら他の指標には深刻な欠陥があることを示す。

導入部では、他の指標の欠陥について概ね以下のように説明している。

  • 実質GDP
    • アメニティ価値を無視。例えば主体が高賃金から低賃金の場所もしくは職業に移動した場合、たとえ主体の場所の嗜好を考慮した場合には主体の状況が改善したのだとしても、実質GDPと実質消費は低下する。
  • 「期待」効用の効用主義的な厚生
    • 指標は個人の効用の横断面(クロスセクション)平均となるが、個人の効用関数の単調変換について不変ではなく、変換後に個人の選択行動が全く変わっていないにもかかわらず社会的な配分の順位付けが変わってしまうことがある。
  • 補償される変動の合計
    • これはカルドア=ヒックス効率性*2や費用便益効率性と呼ばれるものであり、ショック後の均衡価格と賃金を固定して、勝者が敗者に補償した後の残額を測る。しかし、補償される変動の合計がプラスだとしても、勝者が敗者に保証することが技術的に不可能な場合もある(勝者が敗者に補償しようとすると、ショック後の価格は固定値に留まらないため)。

今回の手法は3番目の指標をベースとしているが、固定価格において支払う用意がある金額を合計するのではなく、家計が配分に少なくとも無差別となるために節約できる要素賦存量を用いたとの由。即ち、カルドア=ヒックス指標では、全員の状況が現状と同程度を維持する中で、価格と賃金を固定して、取り去ることができる所得総額によって効率性の利得を計測した。それに対し今回の指標では、ドルではなく主要な生産要素で効率性の利得を計測している。技術を一定として、全員が現状と無差別な状況を維持する中で、そうした要素をどれだけ除去できるかを測定したとの由。