円安と交易利得

3年前に円安は交易利得にどの程度影響しているのか? - himaginary’s diaryで円安の交易条件への影響を見たことがあったが、その後円安がさらに進展したので、そのエントリで描画したグラフを延長してみる。
まずは暦年ベースのグラフ。

これを見ると、前回描画した最終年の2021年以降、円安の進展を受けて、円ベースと契約通貨ベースで測った交易利得の差がマイナス方向に広がったことが分かる。その影響は、2021-2024年の前年差を4年間で累積するとGDPの0.85%に達する。ただ、2番目のグラフにあるように、交易利得の前年差自体がそもそも1年でGDPの1-2%程度普通に振れるので、それに比べれば(これまでのエントリでも書いたように)さほど大きな要因とまでは言えないようにも思われる。

ちなみにその交易利得の為替要因と為替相場を描画してみると以下のようになる。

交易利得の水準自体は(今月実施されたような)国民経済計算の基準年改定で変わるものなので重視すべきものではないが、2020年から2024年までの相対的な変化という意味では、先述の通り、GDPの0.8%を超える影響となっている。これは、2006年から2011年までの円高による逆方向の影響(GDPの約0.7%)を超える影響となっている。

なお、上の最初のグラフを見ると、面白いことに気付く。交易利得の為替要因がプラス方向に開いた2007-2014年も、マイナス方向に開いた2021-2024年も、輸出入デフレーターで計算した本来の交易利得と、円ベースの輸出入物価指数で計算した交易利得の差が、後者の方が小さくなる(ないしマイナス方向に大きくなる)形で開いているのである。

そこで輸出入それぞれについてデフレーターと物価指数を描画すると以下のようになる(参考のため契約通貨ベースの物価指数も描画している。いずれも2020年基準)。


これをみると、輸出については2007-2014年の時期にはデフレーターと物価指数の差は小さく、2021-2024年はむしろ物価指数の方がデフレーターを上回っている(=物価指数から計算する交易利得をむしろ押し上げる方向に差が開いている)。一方、輸入は、両期間とも物価指数がデフレーターを上回っており、これが物価指数から計算する交易利得を押し下げる要因となっていることが分かる。最初のグラフにあるように、デフレーターから計算した本来の交易利得と、物価指数から計算した交易利得の差は、交易利得の為替要因よりも大きなものとなっており、為替要因よりも指数の構成ないし計算方法といった要因の方が交易利得に大きな影響を与えていることが分かる*1

最後に、以上のグラフの2015年以降の四半期ベースのグラフも示しておく。




*1:最後の2つのグラフにあるように輸出入それぞれの円ベースと契約通貨ベースの物価指数の差は大きいが、交易利得を計算する際にそれがかなりの程度相殺されることに注意。