ECB銀行のLivio Stracca*1が、以下の近著で提示した現在の金融経済における考察から7つをピックアップして表題のVoxEUコラム(原題は「What money will become: Seven key questions」)で提示している(H/T Mostly Economics)。
以下はその概要。
- 現在は金融経済にとって一世代の間で最も興味深い時なのか?
- 転換期という意味では、不換紙幣経済において物価安定を達成する技術を中銀が会得した1980年代半ばの大平穏期以来の興味深い時ではないか。
- デジタル資産の台頭により、貨幣とは何か、誰が発行すべきか、といった根本的な問題が問い直されている。
- 準備預金への利払い:現代の金融政策における語られることのない偉業?
- 現在の金融システムは絶対確実か?
- 現金の凋落:寿ぐべきか、懸念すべきか?
- ビットコインには欠点があるが、それがもたらした革命には実体的な価値があるのか?
- ビットコインのブロックチェーン技術は「二重支払い問題*4」を解決し、仲介を経由しない安全な一対一の取引を可能にした。しかし、以下の2つの理由によって将来の貨幣とはならないだろう。
- 支払いシステムが非効率的
- 非集権的な性質によりプルーフ・オブ・ワークが必須となるが、それにより高いエネルギー消費と取引手数料という遅延と費用が発生する。重要なのは、これは仕様であってバグではない、ということである。
- 金融のアンカーとしての機能は乏しい
- 金を模範としているため供給が限られているが、そのため価格の変動性が大きく、価格の基盤も脆弱である。良い金融のアンカーはより柔軟で経済状況に適応的である必要がある。
- 支払いシステムが非効率的
- ただ、ステーブルコインやトークン化など、ビットコインが契機となってもたらされた技術には金融システムを変革する可能性がある。
- ビットコインのブロックチェーン技術は「二重支払い問題*4」を解決し、仲介を経由しない安全な一対一の取引を可能にした。しかし、以下の2つの理由によって将来の貨幣とはならないだろう。
- 暗号通貨はハイエクが正しいことを立証したのか?
- 自動操縦の金融政策:デジタル革命?
- デジタル化は、貨幣をインデックス化された価値尺度とする「自動操縦」システムなど、貨幣政策の急進的な再考への扉を開いた。
- ただ、顕著なリスクもある。
- 現在のシステムは全般的に上手く機能しており、壊れていないものを直す必要性に乏しい。
- 取引の大半が名目で行われているのには相応の理由があり、インデックス化はそれを複雑化し、有用な相乗効果を失わせてしまうかもしれない。
- 統計当局による価格データの操作で完全な連動化が妨げられる可能性。
- 危機時の有用なツールであるサプライズインフレを中銀が作り出す能力が失われる。
- とは言え、金融政策の自動操縦という考えには、デジタル経済における中銀の役割を再定義するような将来の大胆なビジョンを提示する、というメリットもある。
*1:cf. 40年を迎えた大平穏期:横断面分析から分かること - himaginary’s diary、熱を感じる:極端な気温と物価の安定 - himaginary’s diaryで紹介した論文(前者は今回のコラムでも参照されている)。
*2:cf. 前注の前者の論文。
*3:cf. 高額紙幣の廃止とマイナス金利政策 - himaginary’s diary。
*4:cf. Double-spending - Wikipedia、Double-Spending in Cryptocurrency: Definition, Risks, and Prevention。
*6:cf. Unidad de Fomento - Wikipedia。
*7:Indexed Units of Account: Theory and Assessment of Historical Experience | NBER。
