多国籍企業の境界内における貿易

というNBER論文が上がっているungated版)。原題は「Trade within Multinational Boundaries」で、著者はLaura Alfaro(ハーバード大)、Paola Conconi(オックスフォード大)、Fariha Kamal(FRB)、Zachary Kroff(Analysis Group*1)。
以下はその要旨。

We leverage newly linked data from the U.S. Census Bureau and the U.S. Bureau of Economic Analysis to study transactions within U.S. multinational enterprises (MNEs). We show that using administrative data on intrafirm trade allows us to correct for measurement error in survey data and to identify the positive relationship between input-output (IO) linkages and the probability of trade between U.S. parents and their foreign affiliates. We also document the prevalence of intrafirm trade: more than half (three-quarters) of affiliates worldwide (in North America) export to or import from their U.S. parent. Our findings provide strong empirical support for traditional theories of firm boundaries that predict trade between vertically linked units of the same firm, and underscore the importance of accounting for the trade frictions that shape MNEs’ regional supply chains.
(拙訳)
我々は、米センサス局と米経済分析局の新たに紐づけたデータを用いて、米国の多国籍企業の内部取引を調べた。企業内貿易に関する行政データを用いることにより、サーベイデータにおける測定誤差を正し、投入産出関係と、米国の親企業と海外子会社の間の貿易の確率との正の関係を識別できることを我々は示す。我々はまた、企業内貿易が普及していることを明らかにした。世界の半分(北米の4分の3)以上の子会社が米国の親会社と輸出入を行っている。我々の発見は、同一企業の垂直統合ユニット間の貿易を予測する、企業の境界に関する従来の理論に強い実証的支持を与える。また、多国籍企業の供給網を形作る貿易摩擦を説明することの重要性を浮き彫りにする。

ちなみにたまたま見つけたRIETIの論文「RIETI - Intra-firm Trade, Input-output Linkage, and Contractual Frictions: Evidence from Japanese Affiliate-level Data」では

日系多国籍企業の海外子会社レベルのデータを用いて、投入産出関係が企業内貿易に及ぼす影響を再検討するものである。従来の研究では多国籍企業の企業内貿易は親会社・子会社間の投入産出関係に依存しないとされてきた。しかし、企業内貿易の多数のゼロ値を考慮するためポアソン疑似最尤法を用い、産業特性として契約可能性の違いに注目すると、契約可能性の低い産業の場合、垂直的関係にある海外子会社はより活発に親会社に対して輸出を行うことが確認された。この効果は、日本企業の主な投資先である東アジア地域に立地する子会社で顕著であった。この結果は、企業内貿易の決定要因として、契約可能性に劣る際にのみ、投入産出関係が重要な役割を果たすことを示唆するものである。また、企業内貿易は極めて限られた企業に集中していることも併せて確認した。

と記述されているが、米企業について同様の結果を確認した分析になっている(ただし、日系企業では「企業内貿易は極めて限られた企業に集中している」のに対し、米企業では「企業内貿易が普及している」点は対照的となっている。これは米国がカナダ・メキシコと国境を接していることが大きいかと思われる)。