イタリアのメローニ政権の危険性に警鐘を鳴らしたOMFIF記事をMostly Economicsが紹介している。記事のタイトルは「The two faces of Meloni’s Italy: disciplined and quietly dangerous」で、著者はSofia Melis。
以下はその冒頭。
Power doesn’t always knock at the front door. Sometimes it slips in quietly, wearing a business suit, speaking of reform while rearranging the architecture of the state. Italy has seen this before. A century ago, Benito Mussolini didn’t seize power by force, he was appointed and welcomed by a political class seeking order.
Today, the stakes may be different, but the method feels eerily familiar: slow, legalistic, cloaked in responsibility. Italy’s Prime Minister Giorgia Meloni has mastered this subtle choreography and, although her rise is often portrayed as a nationalist surge or a post-liberal tremor, beneath the speeches and slogans lies the quieter, slow, procedural transformation of the Italian state.
In office since 2022, the first Italian female prime minister presents two faces. To Brussels, she is a model of fiscal discipline. Her government meets European Union deficit targets, keeps the debt-to-gross domestic product ratio hovering near 137% and avoids the chaos that defined past populist regimes. European elites and markets see composure, responsibility and continuity.
At home, she is something else entirely.
(拙訳)
権力は常に正面玄関をドンドンと叩くとは限らない。時にそれは、背広を着て静かに滑り込んできて、改革を口にしながら国の構造を変えてしまう。イタリアは以前もそれを目にした。1世紀前、ベニート・ムッソリーニは力によって権力を握ったのではなく、秩序を求める政治勢力によって指名され、歓迎された。
今日、利害関係は当時とは違うかもしれないが、手法はぞっとするほどお馴染みのものだ。ゆっくりと、合法的に、責任の衣を纏っている。イタリアのジョルジャ・メローニ首相はこの微妙な振り付けをマスターしている。彼女の台頭は、国家主義者の急伸ないしリベラル以後の揺り戻しと描写されることが多いが、そのスピーチとスローガンの背後では、より静かでゆっくりとしたイタリア国家の転換が進んでいる。
2022年に就任したイタリア初の女性首相には2つの顔がある。ブリュッセルに対しては、彼女は財政規律のお手本である。彼女の政府は欧州連合の財政赤字目標を達成しており*1、債務国内総生産比率を137%近くに留めており、過去のポピュリスト体制の特徴であった混乱を回避している。欧州のエリートと市場は平成、責任、および継続性を目にしている。
本国では、彼女は全くの別物である。
記事はこの後、民主主義を空洞化させる彼女の動きとして以下を挙げている。
- 公共の混乱を抑えるのに必要なツールと喧伝されて下院で可決された「decreto legge sicurezza」と呼ばれる法令*2により、警察の力が拡大され、非暴力抗議活動や公共空間でのデモが犯罪となる。これまでリベラルな規範によって守られてきた気候変動の活動家や組合および学生のグループは、曖昧な「秩序破壊」の定義の下で、罰金や投獄の可能性に直面することになる。
- 司法の独立性を弱める改革を進め*3、政府機関を体制に忠実な者で固めた。監督機関、公共放送機関、国有企業では能力よりも政治的な近さを基準に一連の指名が行われた。
- 連立政権側が掌握する地方自治体で中央広場での抗議活動が禁止された。
- 教育カリキュラムが気候科学やデジタル教育よりもナショナルアイデンティティを優先するように改訂された。
- 極めつけは、憲法改正を伴う首相公選制の導入の推進*4。
記事では、外交面でのメローニとトランプの近さは象徴的なものに留まるものではない、としている。また、経済が見た目ほど良くないことを数字を挙げて指摘している*5。
*1:cf. 関連日本語記事=ムーディーズ、イタリアの見通しを「ポジティブ」に引き上げ 執筆: Investing.com。
*2:cf. 関連イタリア語記事=La Camera approva il decreto Sicurezza: ecco cosa prevede | L'Espresso、Dl Sicurezza approvato dalla Camera: scopri tutte le novità introdotte。
*3:cf. 関連日本語記事=アングル:メローニ伊首相、改革掲げ司法界と真っ向対立 支持率上昇で勝算も | ロイター。
*4:cf. 関連日本語記事=フレンチショックに揺れる欧州にもう一つの火種、イタリアで首相公選制を問う国民投票の可能性が浮上 【土田陽介のユーラシアモニター】首相公選制に向けた改憲案を上院が可決も、蘇るファシズムとムッソリーニ再来の悪夢(1/4) | JBpress (ジェイビープレス)、伊メローニ首相、「民主主義のために大統領制に改憲を」 | 東亜日報。
*5:この点については、(記事では触れていないが)住宅の省エネ改修への補助という財政政策で経済に梃入れしたスーパーボーナス政策の怪しさをかつてMRブログのアレックス・タバロックが指摘していた=Italy's Superbonus: The Dumbest Fiscal Policy in Recent Memory - Marginal REVOLUTION。