米インフレの原因

についてスコット・サムナーが、3/28Vox記事や、エズラ・クラインがサマーズをインタビューした3/29NYT記事を基に考察している(H/T タイラー・コーエン)。
それによると、以下がインフレの要因になっていることについては経済学者の間で概ねコンセンサスが取れているという。

それに加えて、以下の要因がインフレに寄与しているかどうかで意見が分かれているとの由。

  • 政府の財政刺激策
  • 企業の価格支配力

サムナー自身のインフレについての見解は(相変わらず)単純明快で、名目GDPが伸びているのだから需要の行き過ぎは明らかで、従って100%金融政策の問題、というものである。そして、サマーズ(およびクライン)のインフレに対する見方は自分と同じ、としている。

上記の2つの論点のうち、企業の価格支配力がインフレの要因になっているか、という点について、サムナーはサマーズの否定論を引用している。その内容は概ね以下の通り*1

  • 企業の価格支配力は米国において問題ではあるが、それがインフレの要因になっているというのはビジネスのプロセスへの理解を欠いている。
  • 別の見方をするならば、例えば賃金インフレは価格インフレと同様に問題になっているが、今の労働者には価格支配力はない。
  • さらに別の見方をするならば、アマゾンやウォールマートは供給者に対して価格支配力を持っているが、その供給者に対してより高い価格を支払っている。

また(サムナーが引用するところの)サマーズは、政府がインフレを引き下げるためにできることとして以下を挙げている。

  • 関税の引き下げ(それでCPIを1%ポイントないしそれ以上下げられる)
  • 政府調達価格の引き下げによる競争圧力の増大(バイデン政権が強化したバイ・アメリカン政策はそれに逆行)

なお、政府の財政刺激策がインフレの原因になっているか、という点については、(サムナーは直接言及していないが)サマーズ自身がクライン記事から以下の引用ツイートを行っている。


(拙訳)
リンドン・ジョンソンの「大砲とバター」政策が過剰で危険なインフレ圧力を生み出したのと全く同様に、2021年のマクロ経済拡大の行き過ぎがこうした問題をもたらした。

*1:ちなみにサマーズはこちらの3/23ツイートでもそのような見解を示唆した政府高官を批判し、後続ツイートでは、本気で競争を高めたいならばジョーンズ法(cf. Jones Act – USJ Consulting LLC)を停止すべき、と述べている