というNBER論文が上がっている（ungated版へのリンクがある著者の一人のサイト）。原題は「Mandated vs. Voluntary Adaptation to Natural Disasters: The Case of U.S. Wildfires」で、著者はPatrick W. Baylis（ブリティッシュコロンビア大）、Judson Boomhower（UCサンディエゴ）。
以下はその要旨。
Despite escalating disaster losses and predicted increases in weather-related catastrophes, takeup of protective technologies and behaviors appears limited by myopia, externalities, and other factors. One response to such frictions is to mandate adaptive investment. We measure the effect of California's wildfire building codes on own- and neighboring structure survival using administrative damage and assessment data for most US homes experiencing wildfires since 2000. Differences across jurisdictions and vintages reveal remarkable resilience effects of building codes initially prompted by the deadly 1991 Oakland Firestorm. Codes also benefit neighbors. We use the results to estimate net social benefits of wildfire building standards.
（拙訳）
災害による損失が増大し、気候関連の破局的災害の増加が予測されているにもかかわらず、近視眼的な考えや外部性やその他の要因により、予防的な技術や行動を取る動きは限られてきた。そうした摩擦への一つの対応は、強制的な適合投資である。我々は、2000年以降に山火事を経験した米国の住宅の大半についての行政の損害ならびに評価データを用いて、カリフォルニアの対山火事建築基準法が自身と近隣の建物の存続に与えた影響を測った。管轄地域と築年数による違いは、1991年のオークランドの破壊的な大火災によって最初に導入された建築基準法の驚くべき復旧効果を明らかにした。建築基準法は近隣にも便益をもたらす。我々はこの結果を用いて対山火事建築基準法の純社会的便益を推計した。
ungated版の本文によると、カリフォルニアの建築基準法によって建物の損害リスクは16%ポイント（40%）減少し、近隣の住宅のリスクも2%ポイント（6%）減少したとの由。
また、適合に掛かる推計費用は$15,660もしくは$7,868～$29,429（全米住宅建設業者協会の推計）もしくは$62,760（屋根と外装を完全に交換する場合）である半面、災害発生時の費用は$150,000（住居の再建と中身の損失$766,725＋引っ越し費用を含む24か月の仮住まい費用$61,696＋清掃費用）になるという。近隣が無い場合のブレークイーブンの災害発生確率は0.45%、1件ある場合は0.39%、4件ある場合は0.27%になるとの由。
