コント:ポール君とグレッグ君(2017年第3弾)

久々のガチンコ対決キター、という感じである。

ポール君
昨日出席したある会合で、元政府職員の人から、とても良い質問を受けた。著名な共和党系経済学者で、彼らの党がつい最近上院をごり押しで通過させた、良いところが見当たらない恐ろしいほど悪い税制法案に対して強く抗議した人はいるか、という質問だ。僕は一人も思いつかなかった。そしてそのことは、僕の職業の少なくともそちらサイドの状態についてあまりよろしくないことを物語っている。
ここで共和党系経済学者は3つのグループに分けることができる。第一は、トランプがツイートした書簡に署名した137人のような法案の熱心な支持者だ*1。彼らの背景はばらばらで、経済学者ではまったくない者も多く、存在しない人もいれば、会員費を払ってAEAの会員になった前科持ちの元弁護士もいる。
第二のグループは、法人減税が高成長をもたらすだろう、と主張した公開書簡に署名した9人のプロらしからぬ経済学者のような人々だ*2。彼らは皆、経済学者としての高い評判を有している、ないし、有していた。ジェイソン・ファーマンとラリー・サマーズが指摘したように、彼らは自分たちの主張を裏付けるとした研究を誤って引用しており、その後前言を撤回した*3。彼らは減税主義者を明確に支持し応援するが、不誠実さと臆病さも兼ね備えている。
そしてグレッグ君やマーチン・フェルドシュタインのような第三のグループがいる。彼らは法人減税全般に対して賛意を表したが、それは問題無い。誠実な人でもそうした立場を取ることは可能だ(たとえグレッグ君がある時分析をミスってその間違いを認めなかったとしても、だ)。しかし彼らの中に、現実の法案の実状や、政治家の提供する悪しき分析や、堕落した政治プロセスに対し声を上げた者がいただろうか? 僕が見過ごしているのかもしれないが、彼らによる批判を目にしたことがない。
皆そんなもんさ、自分の支持する政治家がまずいことをやらかしても皆黙っているだろう、と言う人もあるかもしれない。しかしそうではない。ここで骨のあるリベラル派の話を僕が持ち出すだろうな、と思った人もいるかもしれないが、もっと良い話をしよう。僕がかつてかなり悪しざまに罵ったネオコン連中の話だ。イラク戦争を推進したウィリアム・クリストル、マックス・ブート、ジェニファー・ルービン、デビッド・フラムらに対し僕が甘いと思う人はいないだろう。しかしトランプ政権下で彼らが真の勇気を見せたことは嫌でも認めざるを得ない。彼らは、現在の政治体制の破滅的な統治を厳しく、時には声高に批判することを厭わない。如何にネオコン連中の考えは間違っていると僕が思うにせよ、彼らは自分たちが本当に骨のある男と女であることを示した。
保守派経済学者たちについても同じことが言えたら、と思うが、残念ながらそれができないのだ。
グレッグ君
やれやれまたポール君か、という感じだね。いつもの僕は、彼がブログに書くありとあらゆる馬鹿げたことにコメントするのを差し控えているのだが、数日前の彼は特にひどくて僕を名指しで槍玉に挙げた。ということで、コメントを幾つか。
  1. ポール君は僕が決して数学のミスを認めないと言う。いや、ミスをしたと思ったら僕は認めるし、そうしたミスを僕はしょっちゅうする。でもこの場合はどうだろう*4シカゴ大教授のケイシー・マリガンも違うと思っているようで、数学のミスをしたのはポール君だと言っている。他の幾人かの経済学者とも話したけれど(中にはポール君と政治的立場が同じ人もいる)、彼らもポール君の指摘は的外れだと思っているようだ。
  2. ポール君は、僕のような経済学者がトランプ大統領とその政策に対し十分に批判的でなかった、と言っている。以下のことを指摘しておこう。
    • A. 選挙期間中、僕は彼に投票しないと言った*5
    • B. 彼の貿易赤字についての強迫観念を批判した。
    • C. 税制改革は歳入中立的であるべき、と主張した。
    • D. 税制法案を「機能しない混乱した代物」と呼んだ。
    • E. 大学の基金への新たな課税を嘆いた。
  3. ポール君は、僕のような経済学者は税制法案が如何にひどいかをもっと声高に主張しなければならない、と考えている。完全にひどい代物だと思ったら僕もそうするだろうが、数多くの欠点にも関わらず、僕が気に入っている部分もある。法人税率引き下げ、源泉地国課税、州と地方税の控除の縮小、(下院案の)住宅ローン金利控除の縮小、などだ。税制法案全体はごった煮で、悪いところもあれば良いところもある。
  4. ポール君は、税制法案について自分に同意しない限り道義心を欠いている、という立場に立っているようだ。僕の世界観では、分別のある人々同士でも意見が食い違うことがあり、見解が違うからといって人々が他人の道徳的な正直さを疑問視しない時に世の中は最も進歩するものだ。

*1:cf. ここ

*2:cf. ここ

*3:cf. ここ

*4:cf. ここ

*5:cf. ここ