企業課税の最善の方法

1週間前のNYT日曜論説でマンキューが、税制改正共和党議会案を支持する表題の記事を書いている(原題は「How Best to Tax Business」、H/T マンキューブログ)。そこでマンキューは、同案には法人税率の引き下げ以外にも以下の4つの利点がある、としている。

  1. 全世界所得課税から領土主義課税(源泉地国課税)への移行*1
    • 国際標準に沿うことになる。
    • 企業が税金逃れのために海外に本社を移すコーポレート・インバージョンを行うインセンティブが無くなる。
  2. 所得課税から消費課税への移行*2
    • 消費税の方が貯蓄や投資を削ぐ効果が少なく、経済成長に有利。また、生産よりも人々が享受する生活水準に課税するという点で、より公平。
    • 議会案では、企業が投資支出を時間を掛けて償却するのではなく、直ちに控除できるようにすることにより、消費税に近付けている。再投資する所得を免税とすることにより、事実上、消費済み収益に課税している。
  3. 原産地主義課税から仕向け地主義課税への移行
    • 国境調整で、米国の製品が競争力を得て貿易黒字が減少する、もしくは、輸入に依存する企業とその顧客が損をする、と論ずる人がいるが、いずれも誤り。確かに当初は輸入が削がれ輸出が促進されるが、その結果、為替市場への米国からのドルの供給が減る一方で海外からのドルの需要が増え、それによる生じるドル高によって当初の効果が打ち消される。
    • 仕向け地主義の主な利点は、生産地よりも消費地の方が特定が容易なこと。世界中の部品を使って製造している多国籍企業の移転価格による操作がしにくくなる。
  4. 債券から株式への移行
    • 現在、企業は債券保有者への利払いを控除できるが、株式保有者への配当支払いは控除できない。その結果、企業は株式よりも債券に頼るようになるが、これは財務構造を脆弱にする。
    • 議会案では、利払いを控除対象から外すことにより、その非対称的な扱いを是正する。法人税は、収益から賃金支払いと投資支出を控除したキャッシュフローに基づいて課税されることになり、キャッシュフローが株式保有者と債券保有者にどのように支払われるかは関係無くなる。

*1:cf. ここ

*2:cf. ここ