デス・スター破壊の経済学

デビッド・ベックワース経由で、昨年末に「It’s a Trap: Emperor Palpatine’s Poison Pill」という論文が出ていたことを知った。著者はセントルイスワシントン大学のZachary Feinstein。以下はその要旨。

In this paper we study the financial repercussions of the destruction of two fully armed and operational moon-sized battle stations (“Death Stars”) in a 4-year period and the dissolution of the galactic government in Star Wars. The emphasis of this work is to calibrate and simulate a model of the banking and financial systems within the galaxy. Along these lines, we measure the level of systemic risk that may have been generated by the death of Emperor Palpatine and the destruction of the second Death Star. We conclude by finding the economic resources the Rebel Alliance would need to have in reserve in order to prevent a financial crisis from gripping the galaxy through an optimally allocated banking bailout.
(拙訳)
本稿では、スターウォーズにおいて、完全武装で運用を開始した月サイズの戦闘基地(「デス・スター」)が4年の間に2つ破壊されたこと、および、銀河系政府が瓦解したことの金融面での影響を研究する。本研究では、銀河系内の銀行・金融システムのモデルをカリブレートしシミュレートすることに力点を置いている。それによって、パルパティーン皇帝の死と第二デス・スターの破壊によってもたらされたであろうシステミック・リスクの水準を測定している。結論部では、最適配分された銀行救済によって銀河系を掌握することを通じて金融危機を防ぐために、反乱同盟軍が予備として保有しておくべき経済資源を示す。


論文ではデス・スター建造費用と銀河系総生産額(Gross Galactic Product=GGP)について以下のような試算を行っている。

  • 第二デス・スターの建造費用=4垓1900京ドル
    • 第二デス・スターの直径は900キロなので、使用される鉄の量だけで2垓2600京ドルとなる*5。それ以外の費用は第一デス・スターと同様と考えられるので、2垓2600京ドル+1垓9300京ドルで4垓1900京ドルとなる。
  • 両者の建造費用は債務によって賄われ、金利はゼロであったとする。さらに、パルパティーン死亡時に第一デス・スターの負債は半分返済されていたが第二デス・スターの負債は全く返済されていないとすると、債務合計は5垓1550京ドルとなる。
  • 銀河系の平均成長率を2%と仮定すると*6、4ABY(After the Battle of Yavin)のGGPは60.9垓ドル。従って、残された負債額はGGPのおよそ8%ということになる。

Feinsteinは、この数字を用いて、銀行業界や資産価格に関する幾つかの前提の下に債務危機シミュレーションを行い、反乱同盟軍は銀行救済費用としてGGPの15〜20%を用意しておく必要があったが、とてもそれだけの金額を保有していたとは思われないので、パルパティーン死後に銀河系は大恐慌に陥っただろう、という結論を出している。

*1:cf. ここ

*2:リンク先では1.08 x 1015 tonnes(1080兆トン)となっているが、体積=28,591.2立方メートル、総排水量=22000トンの英海軍イラストリアス(cf. イラストリアス (空母・2代) - Wikipedia)をベースに直径=140キロの第一デス・スターのトン数を求めた試算を改めて計算し直してみると、4/3*π*(70*10^3)^3*22000/28591.2=1.10554 x 1015となる。試算結果からすると、Feinsteinもそちらの数字を用いたものと思われる。

*3:論文のリンク先はリンク切れだったので、ここではぐぐって見つけた同名の記事の別のリンク先を使用。

*4:リンク先ではlong ton(英トン)で表記されているが、概算ということもあり、Feinsteinはtonne(メートルトン)との差(約1.6%)は無視したものと思われる。

*5:先の試算サイトによると、第一デス・スターの鉄の費用は85京2000兆ドル(Feinsteinはこの試算結果はそのまま用いたと見られる)。

*6:25,000年間技術進歩が無いこと(cf. この記事)、および、反乱軍の存在に見られるような政治的不安定さに鑑みると、これは高い数字、とFeinsteinは評している。