クルーグマンの賭け?

ブレグジットは短期的な景気後退をもたらす、という一般に流布している説に疑問を投げ掛けたクルーグマンが、7/12エントリで改めて自分の考えを説明した。それに対しデロングが、新古典派的な価格伸縮的で債務がゼロの世界ならば名目金利がゼロ金利下限にあったとしてもブレグジット後も完全雇用が保たれるが、現実世界はそうではないので、完全雇用が保たれるには以下の4つのいずれかが起きなくてはならない、と指摘した(H/T Economist's View)。

  1. 政府購入の拡大
    • IをGで置き換えることにより完全雇用を維持。
    • 現在の保守党政権ではこれは起こりそうにない。
  2. ヘリマネ
    • BOEが現金で国債を購入・消却し、消却された国債の額だけ政府が減税を実施する。
    • 現在の保守党政権がもう少し賢ければこうしたことを行うかもしれない。しかし彼らはそれほど賢くない。
  3. インフレ期待の小鬼*1が現れても追い払うことはしない、とマーク・カーニーが呟き続ける
    • あまり効果的ではなさそう。
  4. イギリスに置いてある資産の安全性に皆が非常な懸念を抱いてポンドの実質価値が下がり、それによる輸出の増加で投資財産業から退出した労働力がすべて吸収される

その上で、クルーグマンの主張――仮に不確実性による投資の手控えによって景気後退が生じたとしても、その後に反動で好景気が生じるのではないか――について以下のようにコメントしている。

Paul seem to be betting that (4) is a real live high-probability possibility: the short-term safe real interest rate is pinned at -2%/year for the foreseeable future, but the pound will bounce low enough for expanded exports to preserve full employment. It could happen--the world is a surprising place. But that possibility seems to me to be a tail possibility, not something that should be at the core of one's forecast.
(拙訳)
ポールは(4)が現実となる可能性が実際に高い、ということを確信しているようだ。短期の安全資産の実質金利は見通せる限りの将来において年率マイナス2%に固定されるが、ポンドは輸出の増加が完全雇用を維持するのに十分なだけ低くなる、というわけだ。世界は常に驚きに満ちているので、そうなる可能性はある。しかし私に言わせればそれは確率分布の裾の方の可能性の話であり、予測の中心に据えるべき話ではない。

*1:cf. ここ