世界貿易の減少という未解明の謎

という論説をMark ThomaがCBS Money Watch書いている(原題は「The unsolved mystery of falling global trade」;H/T Economist's View)。
そこで彼は、世界貿易が減少した理由の候補として、以下を挙げている。

  • 景気後退
    • もしそれが原因ならば、景気回復によって貿易も回復するはず。
    • しかし多くの分析は、より根深い構造的な問題が原因、としている。一つの仮説として、景気後退期に実施された保護主義的な政策が原因、という説もあるが、明確な証拠は無く、多くの論者は否定的。
  • グローバリゼーションの減速
    • 多くの企業が、生産活動を世界的に展開する、という方向を逆転させて国内回帰している。この「グローバルバリューチェーン」の縮小が貿易を減少させているのではないか。
  • 組成効果
    • 非耐久財と比べた耐久財の割合が低下している。
    • 中国では、経済が投資財から消費財にシフトしている。非耐久消費財は耐久投資財に比べ貿易が少ない。
  • 中国および中東欧の世界経済への統合過程の終焉
    • これらの諸国が門戸を開放した時、貿易の持続的な上昇がもたらされたが、その過程が終了すると、貿易は横ばいとなった。

Thomaは、どの説明が最善かという点に関して明確なコンセンサスは無く、複数の要因が共に作用しているのではないか、と述べている。その上で、貿易を増加させる一つの策として、サービス貿易をてこ入れすることを提案している。というのは、サービスは人々が思うより貿易に適しており、デジタル技術の到来後はなおさらそうだ、とのことである。ただ、サービスが最も保護されている分野であることも彼は指摘しており、そうした障壁を低めるためには貿易協定が有効、と述べている。TPPは貿易活動の活発化にあまり貢献しそうにないが、ドーハラウンドの失敗後、米国をはじめとする各国は新たなアプローチが必要という認識を示しており、今後は期待できるかもしれない、と述べて彼は記事を結んでいる。