FRBについてポール・クルーグマンが間違っている理由

と題したWaPo論説(原題は「This is why Paul Krugman is wrong about the Federal Reserve」)で、ピーター・ゴルヴィッチ(Peter Gourevitch)が以下のように書いている

...what is “correct” is about judgment and values. It is also about who benefits, who gains, who loses and how. The tolerable levels of unemployment and/or inflation are at some level matters of value, not efficiency.
...
A full account of the battles over the Fed policy would require us to step beyond asking bankers and economists what they think and even asking economists what they think. We might instead ask the media to broaden its coverage, by asking a wider range of people about what is “correct” than “just” the economic theorists.
(拙訳)
・・・何が「正しい」かは判断と価値観による。またそれは、誰が裨益するか、誰が利益を得るか、誰が損をするか、そしてどのようにそうなるか、による。許容可能な失業率ないしインフレの水準は、ある段階においては価値観の問題であり、効率性の問題ではない。
・・・
FRBの政策を巡る戦いを完全に明らかにするためには、銀行家や経済学者の考えを訊くことから先に踏み出す必要がある。経済学者の考えを訊くことさえ踏み越えるべきである。我々はメディアに対し、経済理論家「だけ」に取材するのではなく、カバー範囲を広げ、より多様な人々に何が「正しい」かを取材するように要求すべきである。


これに対しクルーグマンは、FRBの内外の経済学者は同じような経済モデルを使っている(しかも大部分はスタン・フィッシャーの教えを受けている!)にも関わらず金利の引き上げについて意見が分かれているのであり、その点でゴルヴィッチはポイントを外している、と反論している。ただ、ゴルヴィッチは、経済学者同士の意見の違いというよりは、経済学者と銀行家(および銀行家に絡めとられた人々)との対立の社会力学に焦点を当てている(その点ではここで紹介したディーン・ベーカーに近い)ので、クルーグマンの(おそらくはWaPo論説のタイトルに引き摺られた)反論の方がやや的外れという気がしなくもない。