ジョンズ・ホプキンス大学のSteve Hankeが、新興国の中銀の金融政策は概ね失敗するのだから、ドル化するのが最善の策、とケイトー研究所のブログに書いている(H/T Mostly Economics)。その成功例として挙げられているのが、パナマである。
Most central banks do one thing well: they produce monetary mischief. Indeed, for most emerging market countries, a central bank is a recipe for disaster.
The solution: replace domestic currencies with sound foreign currencies. Panama is a prime example of this type of switch. Panama adopted the U.S. dollar as its official currency in 1904. It is one of the best-performing countries in Latin America (see the accompanying table). In 2014, economic growth in Latin America and the Caribbean was a measly 0.8 percent. In contrast, Panama’s growth rate was 6.2 percent. Not surprisingly, it was the only country in Latin America to have realized an increase in the number of greenfield FDI projects.
(拙訳)
大抵の中央銀行はあることに長けている。即ち、彼らは貨幣面で損害をもたらす。実際、大抵の新興国では、中央銀行は災厄のレシピとなっている。
解決法:国内通貨を健全な外貨で置き換える。パナマはそうした転換の好例だ。パナマは1904年に米ドルを法定通貨として採用した。同国は中南米で最もパフォーマンスの良い国の一つだ(表参照)。2014年の中南米およびカリブ海諸国の経済成長はわずか0.8%に過ぎなかった。対照的に、パナマの成長率は6.2%だった。驚くべきことではないが、同国は、グリーンフィールド直接投資の計画数の増加を実現した中南米で唯一の国だった。
ベネズエラの経済的苦境を取り上げた後続のエントリでHankeは、対照的にドル化で成功したもう一つの国として、かつて自分が財務省のチーフアドバイザーを務めたエクアドルを挙げている(H/T Mostly Economics)。
それによると、1927年に創設された同国の中銀は、通貨スクレの価値の維持を定めた法律に違反して対ドルレートの減価を繰り返した。結局、2000年1月9日に当時のマワ大統領はドル化政策に踏み切ることを発表した。すると実際のドル化実施前にも関わらずプラスの信認ショックがたちまち現れ、中銀は1月11日に公定歩合を200%から20%に引き下げた。だが、1月21-22日にクーデターが起き、マワは失脚した。ただ、クーデターも失敗に終わり、副大統領だったグスタボ・ノボアが大統領職に就いた。ノボアはマワのドル化政策を維持し、9月13日にエクアドルは世界で最も人口の多いドル化国となった*1。
その結果についてHankeは以下のように書いている。
With much the same enthusiasm as Ecuador’s coup plotters and the rigidity of a dogmatic cleric, the critics of dollarization condemned it as something akin to voodoo economics. Well, the critics have been predictably proven wrong.
The misery index is an objective measure of just how well dollarization has worked. The index is equal to the sum of the inflation rate (end of year), bank’s lending interest rates and unemployment rate, minus the actual percentage change in GDP per capita. Simply put, a high index means higher misery.
In Ecuador, prior to the implementation of dollarization in 2000, the country sustained a misery index of over 120. The public suffered greatly from inflation, but after dollarization was implemented, high inflation was stifled and misery drastically fell. The accompanying chart shows the direct link between dollarization and the immediate and sustained decrease in misery. From 2003 through 2014, the misery index in Ecuador has been remarkably constant at around 20 — one of the lowest in Latin America.
(拙訳)
エクアドルのクーデター計画者と同様の情熱と、ドグマ的な国内通貨主義信者と同様の厳格さを以って、ドル化批判者は、ドル化をブードゥー経済学のようなものとして非難した。実際には、予想された通り、批判者は間違っていることが証明された。
ドル化がどれだけうまく機能したかについては、悲惨指数が客観的な尺度となる。同指数は、(年末時点)インフレ率と銀行貸出金利と失業率の和から、一人当たりGDPの実際のパーセント変化率を差し引いたものだ。簡単に言えば、指数値が高いほど悲惨度が高くなる。
エクアドルでは、2000年のドル化実施以前は、悲惨指数は120を超える状態が続いていた。国民はインフレで非常に苦しんでいたが、ドル化実施後は、高インフレは収まり、悲惨度は劇的に低下した。図は、ドル化と、即座かつ持続的な悲惨度の減少との直接的な関係を示している。2003年から2014年の間、エクアドルの悲惨指数は20前後で驚くほど安定しており、中南米で最も低い水準にある。
ちなみに最初のエントリでHankeは、以下の中南米各国の悲惨指数の表を示している。