誰がために壁は倒れた? 資本主義への移行の収支決算・おまけその2

一昨日紹介したブランコ・ミラノヴィッチのエントリについた最初のコメントは、アンドレイ・シュライファーとダニエル・トライスマンのフォーリン・アフェアーズ記事をどう思うか、というものだった。10年前の論文のフォローアップであるその記事に対しミラノヴィッチは、後続のエントリで厳しい批判を投げ掛け、特に以下の4点をいかさまだと指弾した。

  1. 共産主義時代末期の実際の所得水準が正しいということを否定している
    • 彼らはそれはもっと低かったはず、と言うが、家計調査や各国際機関のデータは彼らが間違っていることを示している。
    • 実際のところ、その所得水準は非物的サービスを除外したことで過小評価されていた。その問題は移行国が国連の基準を適用して過去の統計を再計算した時に解決した。
    • これは15年前に決着した話であり、その後は、今回彼らがまた持ち出すまで、そうした馬鹿げたことを主張する人はいなかった。
  2. 1990年代のGDPの低下に伴って生じた諸々の問題(死亡率の増加、平均寿命の低下、大いなる貧困、失業、女性差別、格差、民兵汚職、政治の私物化)について、貧しくなった国には「普通」のことだ、と言って澄ましている
  3. 25年前との比較、という旧ソビエトや旧東欧が良く使った手(例:1950年と、革命と戦争のあった1917年を比較;1970年代と、共産主義が権力を握った1945-1947年を比較)を使っている
  4. 少なくとも25万人の人が死んだ紛争や戦争を無視している


その上で、自分の成功の基準は以下の3点だ、として前エントリの話を繰り返している。

  1. OECD平均より高めの成長を達成して、OECD諸国に追いつきつつあるか?
  2. 格差拡大が緩やかで、ジニ係数OECD平均に沿ったものになっているか?
  3. 強固な民主主義によって10点満点、もしくはそれに近い点数を獲得しているか?