緊密な相関、緩い相関、無相関

Think outside the box(totb)さんが既に取り上げているが、投資の金利への反応が乏しい、という論文をEconomist誌が表題の記事(原題は「Tight, loose, irrelevant」)で紹介している*1以前CFOへのアンケート調査に基づく同主旨のFRB論文を取り上げたことがあったが(todbさんはその論文も同じ頃に取り上げている)、今回の論文は、FRBの資金循環統計ベースのマクロ的な企業投資に関する計量的な分析からその結論を導き出している。
以下は同論文「The behavior of aggregate corporate investment」の要旨。

We study the factors that drive aggregate corporate investment from 1952–2010. Quarterly investment responds strongly to prior profits and stock returns but, contrary to standard predictions, is largely unrelated to changes in interest rates, market volatility, or the default spread on corporate bonds. At the same time, high investment is associated with low profit growth going forward and low quarterly stock returns when investment data are publicly released, suggesting that high investment signals aggregate overinvestment. Our analysis also shows that the investment decline following the financial crisis of 2008 represents a fairly typical response to changes in profits and GDP at the end of 2008 rather than an unusual reaction to problems in the credit markets.
(拙訳)
我々は、マクロ的な企業投資を動かす要因を、1952年から2010年に掛けて調べた。四半期ベースの投資は、それ以前の利益と株式リターンに強く反応するが、標準的な予測に反して、金利の変化や市場ボラティリティ、および社債のデフォルトスプレッドとは概ね無関係であった。また、高水準の投資は、先行きの低い利益成長率と、投資データが公表された際の四半期ベースの低い株式リターンと結び付いていた。このことは、高水準の投資がマクロな過剰投資のシグナルとなっていることを示唆している。さらに我々の分析は、2008年の金融危機の後の投資の減少は、2008年末の利益とGDPの変化に対する極めて通常の反応であり、信用市場における問題に対する異例の反応ではなかった、ということも示している。

論文の著者の一人であるMITのS.P. Kothariによる論文の解説インタビュー記事が同大学のサイトに掲載されているが(他の著者はダートマス大のJonathan Lewellen、ロチェスター大のJerold B. Warner)、そこでは1ドルの増益が次の四半期の25セントの投資の増加、次の5四半期の1ドル近くの投資の増加につながる、と解説されている。また、株価の1割の上昇は、続く18ヶ月に累積ベースで4.3%の投資の増加につながるという。
この論文の実務的なインプリケーションとしてKothariは、同記事で以下の点を挙げている。

  • CEOやCFOは、過去の素晴らしい業績がいつまでも続くわけではない、という論文で示された実証結果に鑑みて、投資についてもう少し慎重になり、例えば従来の見通しに基づいた額よりも1割程度投資を減らした方が良いのではないか。
  • 政策当局者は、税率、規制、労働改革によって決まる投資環境の整備に注力すべき。

*1:Economist誌はPDF.ioのサイトにリンクしているが、こちらでも公開されている。