モデルの前提の現実性が重要となるもう一つの理由

31日エントリでPfleiderer論文とクルーグマンの反応を簡単に紹介したが、今日はそのエントリでリンクしたピーター・ドーマンの反応を紹介してみる。そこで彼は、前提の現実性が重要になるもう一つの理由について概ね以下のような考察を示している。

  • 経済という世界は一つのモデルで把握や予測するには複雑過ぎ、変化に富み過ぎている。ある一連の要因が重要となる局面においては、そうした一連の要因の動学をうまく捉えているモデルが有効かもしれないが、やがて別の一連の要因がそれに取って代わり、最初のモデルの有効性が失われる。話が込み入っている時期には、幾つかのモデルを一度に回さないと何が起きているのか把握できないだろう――たとえそのモデル同士に矛盾する点があったとしても。
  • どのモデルをいつ使うべきかをどのように知るか? 現下の状況を能う限り注意深く観察して何が最も重要な要因であるかを決め、前提がその状況要因に最も適合するモデルを選ぶべき。適用する現実を反映したモデルになっているかを問うという点で、これはまさに前提の現実性を意味する。
  • 前提の現実性は重要ではないという教義は、予測勝負で他のモデルに勝ることが実証的に示された単一のモデルがいかなる場面でも他のすべてのモデルを退けて使われるべき、という世界でしか有効ではない。その世界観がかのフリードマンのモデル定義の根底にある。Pfleidererの貢献は、実世界での検証力が限られている以上、その考え方には限界があり、前提に基づくモデルのフィルタリングが必須である、ということを示した点にある。