ジャネット・イエレンはしくじっていない

とフェリックス・サーモンが書いている
以下はその概要。

  • 市場は別にパニクってはいない。米10年国債金利をみると、例えば13日にジョン・ケリーがロシアへの経済制裁について述べた時に10bp下げた。今回の変動も通常の変動の範囲内であり、全般的に金利は2.6%と2.8%の間で落ち着いて推移している。

    

  • また、今回の大きな変動は2時ちょうどの声明リリースと同時に起きており、イエレンのいわゆる「しくじり」は大した変動を与えていない。
  • 皆は株式市場を見てイエレンがやらかしたと思っているが、重要なのは債券市場であって株式市場ではない。
  • 株式市場の下落はそれほど大きくも長くも無かったが、人々が認識するのには十分だった。それはむしろ良いこと。というのは、イエレンは透明性を高めるべきで、会見で何を言った言わないに過剰に気を配るべきではないからだ。FRBが株価が下落することを何かやらかしたらそれはすべて失敗、と捉えられていた古き悪しきグリーンスパン時代に戻るべきではない。
  • イエレンの率直な回答が株式市場のボラティリティを僅かに高めたならば、それはそれほど悪いことではない。現在の株価のボラティリティはかなり低い半面、これからのイエレンは、一連の金利上昇とそれが引き起こす株価の下落という経験を覚悟せねばならないからだ。
  • イエレンの言葉は透明性を高めただけでなく、市場に今後起こり得る様々な事態への準備をさせた。QE終了から6ヶ月後にFRBが実際に金融引き締めを開始したならば、市場は失望するだろうが、FRBは「警告しなかったとは言わせない」というスタンスを取ることによってそれを正当化できる。
  • 昨年10月の記事で説明したように、透明性と予測可能性は両立不可能な目標(∵FOMC議事録で白熱した議論をありのままに晒すと、市場は却って政策の先行きを読みにくくなる)。イエレンは透明性を高める方に行くべき。FRBの将来の政策は未知であり、知る術もない。イエレンはその事実について率直であるべき。アダム・ポーゼンがNYT記者のビンヤミン・アップルバウムに述べたように、FOMCは今後ますます不協和音が高まり予測不可能になるだろうが、それは経済が正常化に向かっている証。市場はそれを覚悟すべきで、その前兆を見せた咎でイエレンを非難すべきではない。