米国人は余暇を犠牲にしたカネで健康を買う

という主旨の論文をEconomic Logicが紹介している。論文のタイトルは「Why Do Americans Spend So Much More on Health Care than Europeans? – A General Equilibrium Macroeconomic Analysis」で、著者は上海大学のHui Heとヴァンダービルト大学のKevin X.D. Huang。


以下はその要旨。

Empirical evidence suggests that both leisure time and medical care are important for maintaining health. We develop a general equilibrium macroeconomic model in which taxation is a key determinant of the composition of these two inputs in the endogenous accumulation of health capital. In our model, higher taxes lead to using relatively more leisure time and less medical care in maintaining health. We find that the difference in taxation can account for a large fraction of the difference in health expenditure-GDP ratio and almost all of the difference in time input for health production between the US and Europe.
(拙訳)
余暇と医療は共に健康維持にとって重要であることが実証結果から示される。我々は、健康資本の内生的な蓄積に対するそれら2つの入力の構成について、税制が重要な決定要因を果たすような一般均衡マクロ経済モデルを構築した。我々のモデルでは、高い税金は健康維持において相対的に余暇の利用を増やし、医療の利用を減らす。我々は、米国と欧州の医療費の対GDP比の差のかなりの部分、および、健康の生産に対する時間の入力の差のほとんどが、税の違いで説明できることを見い出した。


また、Economic Logicによるざっくばらんな解説は概ね以下の通り。

  • 健康であるためには、十分な余暇、もしくは働き過ぎないことが必要。
  • しかし労働所得税が低いと、人はもっと働いてしまう。
  • それによって健康を損なうため、高所得によって賄うことが可能になった医療サービスを買うことによって埋め合わせる。
  • 医療サービスへの需要が高まるため、それらのサービスの価格が上昇する。
  • 結局、米国人は欧州人よりたくさん消費できる代わりに、医療サービスにより支出し、健康状態がより悪く、余暇がより少ない、という結果に終わる。それはすべて労働所得税が原因。どちらが良いと思うかは各人のお好み次第。