死を尺度とした失業の不効用のフェルミ推定

をクリス・ディローが試みている
以下がその手順。

  • 英国家統計局による0-10スケールの生活満足度調査によると:
    • 失業者の平均は6.47で、非失業者の平均は7.53。従って、不平家が失業しやすいという逆の因果関係が無いとすれば、失業の不効用は1.06。
    • 結婚している人の平均は7.72で、配偶者に先立たれた人の平均は7.26。従って配偶者の喪失の不効用は0.46。
  • ある人の死が配偶者以外の20人に同じ悲しみをもたらしているとすれば、その死の不効用は21×0.46=9.66。
  • 労働市場フロー調査によると、2012年第4四半期に248万人のうち59.5万人が失業状態から雇用状態に移行した。従って、失業の平均期間は1年であると見積もられる。
  • Andrew Clark and Yannis Georgellisによると、配偶者の死を乗り越えるのに平均して男性は1年、女性は3年掛かるという。ここでは2年とすると、近親者の死は21×2×0.46=19.3の不効用をもたらすことになる*1
  • さらに死亡した当事者の不効用を、結婚生活をあと10年楽しめたはず、と恣意的に仮定し、7.72×10=77.2と見積もる。トータルで、死の不効用は77.2+19.3=96.5となり、失業の91倍ということになる。
  • 2007年より現在の失業は94.4万人多い。これは1万人以上の死に相当する。
  • オズボーンの誤った財政政策が2.4万の失業をもたらしたとするならば、英国最悪の連続殺人鬼より大きな不効用をもたらしたことになる。


この推定の持つ意味について、ディローは以下の3つの可能性を挙げている。

  1. 幸福度調査はどこか胡散臭いことを示している。
  2. 効用主義は間違いであることを示している。
    • 失業をもたらすことと死をもたらすこととは質的に異なるものであり――特に片や意図的で片やそうでない場合は――、同一尺度で両者を比較するのは不可。
  3. 失業は実際に大きな社会的悪であることを示している。
    • 失業者が社会的・政治的に隅に追いやられているため、その事実を我々は十分に認識していない。

*1:ただしコメント欄でディローは、この計算では悲しみが薄らいでいくことを考慮しなかった、と追記している。