家計の期待名目所得上昇率の低下が大不況をもたらした

ということを示す図をデビッド・ベックワースが提示している(データソースはミシガン大学トムソン・ロイター消費者調査)。


全般的な(=部分的なものに留まらない)期待名目所得上昇率の低下が消費支出を抑え、大不況につながった、というのはシカゴ連銀のMariacristina De Nardi, Eric French, and David Bensonが論じた点だが、この図はそれを裏付けている、とベックワースは言う。また彼は、このデータよると大平穏期の期待名目所得上昇率の平均は5.3%だったが、それを達成できなくなったことが実質債務の増大につながった、とも指摘する。


その上でベックワースは、今も続くこうした低下をFRBは防ぐことができるはずであり、それをしない/しなかったのは職務怠慢だ、と持説を強調している。


またベックワースは、コメント欄でのNick Roweのリクエストに応えて以下の2枚の図を追加している。



1枚目は名目GDP成長率と対比させたものであり、2枚目は平均と中位値を対比させたものである(最後の図は原系列を使用し、元の図を含めたそれ以外の2枚の図は3四半期の中心化移動平均を用いて平滑化したとの由)。
前者では期待名目所得上昇率は名目GDP上昇率に先行しているように見え、後者では平均と中位値の乖離は大不況まではほぼ一定だったが、その後縮小した、とベックワースは指摘している。


Nick Roweは自ブログでもこのベックワースのエントリを取り上げ、考えるべき点として以下の6点を挙げている:

  1. 米国以外はどうか?
  2. 家計の期待名目所得上昇率は名目GDP上昇率と同じではないだろう(これはベックワースが追加グラフで応じた論点)。
  3. ベックワースの図では1982と2009年の不況は予見されているが、1991年と2001年の不況は予見されていない。
  4. 図では2005年に低下が始まっているが、2008年の金融危機と2009年の不況との因果関係を言うには少し早過ぎるのではないか?
  5. 論点3と4で指摘した期待名目所得上昇率の低下で説明できない部分を、金利などの他の要因が説明するだろうか?
  6. そもそも期待の変化をもたらしたのは何か?