サッカーファンでいることは本当に心臓に悪い

2週間ほど前、Cheap TalkのJeffrey Elyが「The chart that proves being a soccer fan really is heart-wrenching」と題された3/2付qz.com記事から以下の図を引用し、サッカーが最もサスペンスフルなスポーツの一つだと理論的指標から論じた自分の以前の研究が実証的に裏付けられた、と書いている。この図は2008年の論文に掲載されたもので、2006年ワールドカップ開催期間中、ドイツが絡んだ試合が行われた日に、多くのドイツ人が心臓発作に襲われたことを示している(qz.comによれば、MITスローン・スポーツ・コンファレンスでこの図が提示されたのをスポーツライターKatie Bakerツイートし、改めて注目されたとの由)。


ここで点7はピークが見られないが、これは点6の対イタリア準決勝戦で破れた後の対ポルトガルの三位決定戦だったとのことである。では点8は何か、と尋ねたコメンターに対しElyは、PKまでもつれこんだイタリア対フランスの決勝戦で、多分心臓の弱いアルザス人だろう、と冗談交じりに返している。


ちなみに上図で裏付けられたというElyらの昨年の研究は「Suspense and Surprise」というタイトルで、要旨は以下の通り(論文の著者はJeffrey ElyのほかAlexander Frankel、Emir Kamenica)。

We model demand for non-instrumental information, drawing on the idea that people derive entertainment utility from suspense and surprise. A period has more suspense if the variance of the next period's beliefs is greater. A period has more surprise if the current belief is further from the last period's belief. Under these definitions, we analyze the optimal way to reveal information over time so as to maximize expected suspense or surprise experienced by a Bayesian audience. We apply our results to the design of mystery novels, political primaries, casinos, game shows, auctions, and sports.
(拙訳)
我々は、人々がサスペンスやサプライズから娯楽的効用を引き出すという考えを基に、非実用的情報への需要をモデル化した。次にどうなるかについての人々の考えのばらつきが大きいほど、その時点のサスペンスは大きくなる。直前に考えていたことと今考えていることの落差が大きいほど、その時点のサプライズは大きくなる。この定義を基に、我々は、ベイズ的な聴衆の体験するサスペンスやサプライズの期待値を最大化するのに最適な情報の時系列的な開示手順を分析した。我々はミステリー小説、政治の予備選挙、カジノ、ゲームショー、オークション、およびスポーツの設計について我々の分析結果を応用する。

コメント欄では、では上図のピークの高さはその研究で提示された指標で測った試合のサスペンス度の予測通りだったのか、という突っ込みが入ったが、それに対しElyは、金曜のネタエントリにマジレスしないで、と軽くかわしている。