5つの均衡

ノアピニオン氏が経済学における均衡について解説したエントリで、5つの均衡を代表例として挙げている:

  1. ワルラス均衡
    • 競争均衡もしくは一般均衡とも呼ばれる。
    • 価格調整によってすべての市場が清算される状態。即ち、経済のすべての財について需要と供給が均衡している状態。
    • 人々の計画が均衡している状態――私の計画があなたの計画を考慮に入れ、あなたの計画が私の計画を考慮に入れた状態――という概念も含む。
       
  2. ナッシュ均衡
    • 人々の戦略がお互いに対する最適反応になっている状態。即ち、他のすべての人の計画が変わらないならば、誰も自分の計画を変えようとしない状態。
    • ワルラス均衡もナッシュ均衡の一種となるが(∵ワルラス均衡では供給者も需要者も計画を変更しようとしない)、非ワルラス型のナッシュ均衡も数多くある(例えば逆選択モデルでは市場が清算されない)。
       
  3. 合理的期待均衡
    • 将来に関する不確実性のあるワルラス均衡。
    • 価格調整による市場清算の条件に加えて、将来の出来事に関する人々の主観的な信念が実際の確率に等しい、という条件が付く。即ち、信念と確率が均衡している。人々が確率を学習していくモデルとはその点で対照的である。
    • ラドナー均衡の一種。
       
  4. 制約付き一般均衡
    • 価格変更にメニューコストなどのコストが掛かれば、価格調整によって市場が清算できないことはあり得る。そのほか、価格変更ができる時期とできない時期を妖精さんが決める場合(カルボ型価格設定モデル)や、サーチコストがある場合(サーチ理論)も同様。
    • 市場が清算するとは限らないためワルラス均衡が得られない可能性もあるが、それでも人々の計画はお互いに整合的となる。
    • 労働市場清算するとは限らない粘着価格ニューケインジアンマクロモデルにおける均衡など。
       
  5. 定常状態
    • DSGEを初めとする動学モデルでは、経済は何らかの「定常状態」に向かう。
    • 定常状態の経済では何も変わらないか、もしくは、長期的な趨勢変化率でのみ変化する。
    • 経済が定常状態に至らないこともあり得るが、それでも技術的には定常状態は均衡の一種である。