についてロバート・ワルドマンが考察している。
経済学者は、需要の変動が生産に与える影響は一時的なものであるという前提のもとに
- 金融政策は長期的にはインフレにしか影響しないので、インフレ目標政策が望ましい。
- DSGEモデルは重要かつ有用であり、マクロDSGEモデルは外生的な均衡成長経路周辺の変動を扱う。
と論じているが、もし需要ショックの影響が一時的で無いならば、そうした議論は大いなる時間の無駄に過ぎなかったことになる、とワルドマンは主張する。
その上で、そうした前提は
- 長期的には一人当たりGDPは技術によって決定される。
- 技術進歩は外生的なものであり、経済状況に左右されない。
- 以上。
という論理に基づいている、と喝破している。
しかし、技術進歩が外生的だと本当に信じている人はいないし、そうしたモデルも存在しない。研究開発に関する標準的なモデルでは外生化されていないし、学習モデルでももちろん違う。従って、上記の二番目の条件はナンセンスである、とワルドマンは指摘する。
それにも関わらず、なぜそうした前提が使われ続けているのか? ワルドマンはその理由の候補として以下の3つを挙げる。
- 経済学の実証分析で重要な国は米国だけであり、米国は(大恐慌と第二次世界大戦を除き)指数関数的な成長経路を辿ってきたため、それが規範となった。それは偶々に過ぎないと反論するためには、他国では違うということを示す必要があるが、そうした実証分析は出されていない。
- 我々は自らの道具の道具に成り果てている。我々は線形モデルをプログラミングすることができ、定常状態の周辺を線形化することができるがために、定常状態に規準化可能な唯一無二の均衡成長経路を必要とする。
- ソローが外生的な技術進歩を仮定してリクスバンクのノーベル記念賞を受賞した。
ある経済学者が何かを仮定し、それが便利で、数え切れないほど引用されれば、それは標準的な仮定となり、単なる事実よりも良いものとなる、とワルドマンは皮肉っている。また、標準的なモデルでは標準的な仮定からの逸脱は一つしか許されないので、名目価格の硬直性と外内生的技術進歩を同時に仮定することはできない。そのため、金融政策当局は単にインフレ目標を追求すべし、という話になるのだ、とも揶揄している。