という結果を報告した論文をEconomist誌が紹介している(H/T wrong, rogue and booklog)。論文の著者は、ウォータールー大学のIgor GrossmannのほかKarasawa, M., Izumi, S., Na, J., Varnum, M. E. W., Kitayama, S., & Nisbett, R. E.で、Psychological Scienceに掲載との由*1。
以下は記事の概要。
- 186人の日本人と225人の米国人*2に、仮想的な新聞記事を読ませ、「この後どうなるか」「どうしてそうなると思うか」を質問。
- 記事は以下の二種類(被験者の半分ずつを各種類の記事に割り当て)。
- 集団間の紛争を描写した記事
- 例:太平洋の貧しい島国において油田が発見され、外国の石油資本に発掘を許可するかどうかを巡って島民の間で対立が生じた(裕福になる機会と考える人々 vs 生活様式の変化や環境汚染の可能性を心配する人々)。
- 個人間の紛争に関する相談コラムの体裁を取った記事
- 親戚、友人、夫婦の間の揉め事。
- 集団間の紛争を描写した記事
- 被験者の属性を隠した上で、その回答に対し、然るべき訓練を受けた評価者が三段階の評点を付ける。評価は、賢明な推論において重要と思われる5つの側面のそれぞれについて付けられる(1=その側面をまったく考慮していない、2=幾分か考慮、3=大いに考慮)。
- 紛争を解決する機会を見い出そうとすること
- 妥協点を見い出そうとすること
- 個人の知識の限界を弁えていること
- 問題に対する見方が一つに限られないことを弁えていること
- 事態が改善する前に悪化することがあり得るということを認識していること
- 評点を100点満点に変換したところ、以下のような結果になった。
集団間の紛争への回答の評点(平均) | ||
---|---|---|
国/被験者年齢 | 25歳 | 75歳 |
米国人 | 45 | 55 |
日本人 | 51 | 51 |
個人間の紛争への回答の評点(平均) | ||
---|---|---|
国/被験者年齢 | 25歳 | 75歳 |
米国人 | 46 | 50 |
日本人 | 53 | 52 |
- 米国人は年齢とともに賢くなるというのは、Grossmanの以前の研究と整合的な結果。また、この結果を額面通りに受け止めると、日本の方が早く賢明さを身に付けるということになる。
- 一方、集団主義的と言われる日本人の方が個人主義的と言われる米国人よりも個人間の紛争の解決に長けており、集団間の紛争については(少なくとも老齢者については)その逆、というパラドックスも見られる。これは、集団主義的な社会では個人間のスキルを発達させる必要があり、個人主義的な社会では社会的なスキルを発達させる必要がある、ということを示唆しているのかもしれない。
なお、記事のコメント欄では、儒教的な社会では社会規範が若者にも浸透しているのに対し、米国では各世代で社会規範に関し車輪の再発明をするのが良しとする風潮があるのでは、という指摘や、米国人は自分たちが思うほど個人主義的ではないのでは、という指摘が見られる。