26年目の確認

昨日紹介した論説記事批判などどこ吹く風という感じで、マンキューが、26年前の自分の論文での理論的予言が最近の研究で実証された、と直近ブログエントリで喜んでいる。


その実証結果は、以下の図で端的に表わされる(該当研究論文=Fatih Guvenen、Serdar Ozkan、Jae Songによる「The Nature of Countercyclical Income Risk」より)。

即ち、景気後退によるネガティブ・ショックは低所得者層ほどダメージが大きく、その結果所得分布が歪む、という現象が実証された、とのことである*1


マンキューの論文では、消費へのネガティブ・ショックが一部の人に集中した場合、その分布の歪みがエクイティ・プレミアム・パズルを説明できる、ということを示している。そうした歪みは単純な平均値では捉えられないため、平均値だけを扱った資本資産理論では説明できない、というのがマンキューの考察である。


ただ、単純に考えれば、景気後退の悪影響が低所得者層で大きいという実証結果は、社会保障政策の必要性に有力な支持を与えるもの、という解釈も成り立ちそうである。その点で、この研究を自ブログで喜び勇んで取り上げたことは、デロングやPollackが彼のNYT論説について指摘したのと同様に、マンキューに取って両刃の剣になっているような気もする。

*1:ただし論文では、上位1%のダメージも例外的に大きい、とも報告している。